表題番号:2009A-506
日付:2011/04/14
研究課題新規好中球機能検査法の健康診断・臨床検査への応用
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | スポーツ科学学術院 | 准教授 | 鈴木 克彦 |
- 研究成果概要
- 本研究では好中球機能検査法のなかでも、温度官能性ハイドロゲルを用いた血中好中球の接着・遊走能と活性酸素産生能の測定、および酵素免疫測定法による血漿のミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase: MPO)とカルプロテクチン(calprotectin)の濃度測定を評価系として設定し、各種の酸化ストレスや炎症の条件化で検討を行った。好中球接着・遊走能については、従来の顕微鏡下での血球計算盤を用いた計測に加え、蛍光をによる核染色を用いた定量法も採用し、測定系の一部自動化にも取り組んだ。
好中球数の臨床検査としての応用については、炎症性腸疾患患者の白血球除去療法の治療経過のモニターとして検討したが、有意な影響は認められなかった。また高齢者では好中球機能が亢進し慢性炎症の状態となるが、身体活動量の高い者と低い者との間に有意差は認められなかった。一方、運動負荷の前後の検討では、伸張性筋活動の後にやや好中球機能が上昇する傾向がみられたが、数日後の遅発性筋肉痛の発症時には変化が認められなかった。一方、持久性運動負荷の後には血漿のミエロペルオキシダーゼとカルプロテクチン濃度の上昇が若年者でも中高年者でも認められた。よって、好中球機能は持久性運動によって亢進することが確かめられた。がん患者では健常者より好中球活性酸素産生能の亢進がみられ、抗酸化物質の使用により酸化ストレスの軽減効果が示唆された。そこで、各種植物抽出成分のin vitroでの機能性評価に応用したところ、ビタミンC、カテキン、ポリフェノールなど抗酸化作用が報告されている物質群では濃度依存性の有意な抑制効果が観察されたが、とくにそのような効果が報告されていない物質群では影響は認められず、このハイドロゲルを用いた好中球機能測定系が抗酸化作用、抗炎症作用のスクリーニング系として有用である可能性が示された。
そこで今後は、運動負荷による炎症反応や酸化ストレス、がん患者や高齢者の軽度の慢性炎症(chronic low-grade inflammation)への抗酸化物質の介入研究による評価に応用していくことになった。