表題番号:2009A-103 日付:2010/04/05
研究課題マンション法の国際比較のための方法論・組織論に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院法務研究科 教授 鎌野 邦樹
研究成果概要
本研究は、2009年10月に申請を予定していた日本学術振興会「アジア・アフリカ学術基盤形成事業」(2010年4月より3年間)のための基礎作業として、マンション法の国際比較研究のための方法論および組織論について調査研究することを目的としていたところ、同申請は2010年度分としては採用されなかったが、本研究の目的はおおかた達成できた。したがって、本研究の成果に基づき、2010年10月に、再度、同申請をおこなうか、または科学研究費・基盤研究(B)の申請を行う予定である(なお、本研究をさらに展開させる研究につき、2010年度においても特定課題研究助成費の交付の決定を受けたところである)。
 本研究により得られた成果は、次のとおりである(以下、申請時の「研究目的」の記述にほぼ対応させて述べる)。
 (1) マンション法の国際比較研究の対象となる諸国の法令および関連資料の収集および整理については、欧米(イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、イタリア、ギリシャほか約20か国)のほか、アジア・アフリカ地域について約10か国(南アフリカ、韓国、中国、台湾、シンガポ-ル、オ-ストラリア、ニュ-ジ-ランド等)に関して行った。
 (2) マンション法の比較についての方法論については、やはり法系・法圏(英米法系と大陸法系、さらに大陸法系でも例えばドイツ法系とフランス法系等)の枠組みを基礎とし、そして、アジア・アフリカ法の理解についても、欧米法の継受という視点が有益であるという点を確認することができた。ただ、制定時のマンション法が改正させた場合には、各国独自の展開があることがいくつかの諸国(日本、韓国等)において明らかとなった。また、このような体系的な法の比較という理論的側面の解明と共に、各国の法制度の性格いかにかかわらず、現実には各国でほぼ共通する法律問題・法律紛争が存在すること(修繕と改良の区別、管理費の滞納、管理の停滞、複合型マンションの管理問題、建替えと解消、簡易迅速な紛争解決の模索等)が明らかになった。今後の比較研究のひとつの柱は、各国に共通する問題・紛争についての機能的な比較および共通に効果的な制度の発見にあることが明らかになった。
(3) マンション法の比較研究の組織・体制の構築に関しては、南アフリカ・ステレンボッシュ大学教授のVan Der Merwe 教授との協議(2009年10月に滞在先のイギリス・アバディ-ン大学を訪問)、およびカン・ヒョクシン教授(韓国)や権承文教授(中国)の訪日の機会において、今後の継続的・組織的な共同研究を約すると共に、すでに上記の点などについて意見交換をし共同研究に着手した。