表題番号:2009A-095 日付:2010/04/10
研究課題日本語の「機能文型」に基づく人文学系講義の「談話型」に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院日本語教育研究科 教授 佐久間 まゆみ
(連携研究者) 一橋大学・留学生センター 准教授 石黒 圭
(連携研究者) 東京外国語大学・留学生日本語教育センター 准教授 藤村 知子
(連携研究者) 山形大学・人文学部 教授 渡辺 文生
(連携研究者) 桜美林大学・リベラル・アーツ学群 教授 青山 文啓
(連携研究者) ミネソタ大学・ESL・スラブの言語・文学研究所 教授 ザトラウスキー ポリー
(連携研究者) ミュンヘン大学・日本センター 専任講師 高橋 淑郎
(連携研究者) 松蔭大学・異文化コュニケーション学部 専任講師 宮田 公治
(連携研究者) 筑波大学・外国語センター 非常勤講師 小沼 喜好
(連携研究者) 国際教養大学専門職大学院・グローバル実践教育研究科 助教 中井 陽子
(連携研究者) 東京大学・留学生センター 特任助教 河内 彩香
(連携研究者) 日本語教育研究センター 非常勤講師 鈴木 香子
(連携研究者) 日本語教育研究センター インストラクター(非常勤) 朴 ヘヨン
研究成果概要
本研究では、人文学系の講義全12資料における「日本語機能文型」の用例を検索し、2種の講義A、Bの「情報伝達単位(CU)」「節」による文型記述をして表現特性を分析した。また、日本国内の大学・大学院の外国人留学生35名を対象とした講義AのVTR視聴による受講ノートと要約文の理解調査を実施し、日本人大学生28名の調査結果と比較して、留学生の日本語の講義理解における談話の全体的構造の認識不足の問題を明らかにした。
「日本語機能文型」739項目を検索した12種の講義で、検索対象外とした114項目(15.4%)には1,2レベルの初級文型が100項目(87.7%)あり、6~8レベルの上級文型はなかった。機能文型の使用頻度は、検索した625項目(84.6%)中に、「異なり文型」の使用が399項目(54.0%)、不使用が226項目(30.6%)であった。上級文型ほど不使用率が高く、検索保留を加えると、初級・中級文型がさらに多用される傾向がある。つまり、日本語の講義の談話に多用される機能文型の習得が、外国人留学生の講義理解力の向上にとり有効だということである。
講義A、Bの談話の全文を「情報伝達単位(CU)」に分類し、「文末・節末叙述表現」からなる「節」ごとに、全機能文型を記述した結果、検索保留の初級文型が多用されていた。講義の談話の文型記述により、接続詞や指示語を含む連文、話段、連段等の統括機能の及ぶ範囲や多重構造を客観的に認定し、「談話型」のより精緻な分析が可能になった。
受講ノートと要約文の表現の文型記述により、接続・指示・省略・反復・引用・参照・転換表現等のCUを指標に、原話の話段の統括機能を客観的に検証することが可能になる。本研究により留学生の日本語の講義理解力を向上させる教材開発の可能性が得られた。

佐久間まゆみ研究代表者(2006)『2005年度重点研究 研究成果報告書「日本語機能文型」教材開発のための基礎的研究』早稲田大学日本語研究教育センター