表題番号:2009A-083 日付:2010/02/25
研究課題持久的パフォーマンスを向上させるための最適な脂質摂取量の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 樋口 満
研究成果概要
 近年、持久的な運動能力に深く関係している骨格筋のミトコンドリアが、高脂肪食を摂取することで増加することが報告され、骨格筋のミトコンドリアの増加に、食事から摂取する脂肪が重要な役割を担っていることが明らかとなっている。そこで、我々は、実験動物を用いて、体脂肪の蓄積を伴わずに骨格筋のミトコンドリアを増加させ、持久的運動パフォーマンスを高めることができる最適な脂肪の摂取量を検討することを目的として研究を行った。

課題1:異なる脂質濃度の食餌摂取が体組成及び骨格筋ミトコンドリア酵素活性に及ぼす影響
 SD系の雄性ラットを低脂肪食(エネルギー比:12.5%)群、普通食(25%)群、高脂肪食(40%)群及び超高脂肪食(60%)群に分け、それぞれの食餌を4週間摂取させた。
 4週間の食餌介入の結果、低脂肪食(12.5%)群と比較して超高脂肪食(60%)群の体重当たりの内臓脂肪重量は有意に高い値であった。60%群の3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性は、12.5及び25%群と比較して有意に高い値であった。40%群の3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性は12.5%と比較して、高い傾向が観察された。

課題2:異なる脂質濃度の食餌摂取が持久的運動パフォーマンスに及ぼす影響
 研究課題2では、実際にラットに走行運動を行わせ、4週間の異なる脂質濃度の食餌摂取がラットの持久的運動パフォーマンスに及ぼす影響を検討した。
 40及び60%群の疲労困憊にいたるまでの走行時間は、12.5及び25%群と比較して有意に高い値であった。
脂質エネルギー比が60%の食事は競技者の食事に導入するには難しいものの、本研究結果から、脂質エネルギー比が40%の食事であっても持久的パフォーマンスを向上させる可能性が示唆された。