表題番号:2009A-071 日付:2010/03/14
研究課題有機・無機半導体界面制御による新規デバイスの創製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助手 西永 慈郎
(連携研究者) 理工学術院 教授 堀越佳治
研究成果概要
フラーレンC60は炭素60個からなる対称性の高い分子であり、有機TFTや太陽電池への応用が検討されている。我々は今までにGaAs基板上にC60結晶を成長させ、得られたC60薄膜の結晶性は非常に良いこと、フラーレン成長初期層の構造がGaAs表面再構成によって影響を受けることを示してきた。しかし、この得られたC60薄膜は結合力がvan der Waals力であるため、機械的強度が非常に弱く、熱や化学的プロセスに対して脆弱であり、実用的なデバイス応用は大変困難であることがわかった。C60分子はC60分子間よりも金属原子との間に強い結合を形成すると報告されており、多価金属を添加することにより多価金属が架橋の役割をして、C60分子間の結合力を強くすると予想できる。そこで、C60結晶の結合力を上げることを目標に、分子線エピタキシー(MBE)法により多価金属Al, Ga, GeをC60と同時蒸着させ、多価金属・C60複合体薄膜を製作した。この得られた薄膜の機械的強度をVickers硬度測定によって調べたところ、機械的強度が飛躍的に増大し、有機溶媒にも不溶となることがわかった。また、Ge・C60複合体薄膜の電気的特性は大気下においても高い導電率を示すことがわかった。今回、このGe・C60複合体と銅フタロシアニン(CuPc)のヘテロ構造をITO基板上に作製し、疑似太陽光を照射したところ、大気下において光起電力を確認した。この発電効率はバルクヘテロ構造を用いないCuPcとC60薄膜のヘテロ構造による太陽電池のトップデータに近い値であり、機械的・化学的強度が高く、大気下でおいても安定に動作することが特徴といえる。これはGe・C60複合体薄膜が、大気中の酸素や水に対する保護膜としても機能していることを示唆している。今後、発電効率を飛躍的に高めることが可能であるバルクヘテロ構造を、この系に採用することによって、多価金属・C60複合体薄膜を用いた機械的強度の高い高効率有機薄膜太陽電池の作製を図る。