表題番号:2009A-061
日付:2013/05/23
研究課題ルテニウム三核錯体のデンドリマー型多量体の合成と性質
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 | 教授 | 山口 正 |
- 研究成果概要
- 本研究はオキソカルボキシラト架橋ルテニウム三核錯体, [Ru3O(RCOO)6L3]n+,をユニットとし、4,4'-bipyridine を架橋配位子としたデンドリマー型あるいはデンドロン型の多量体を合成しその機能を明らかにするものである。このルテニウム三核錯体は三段階の可逆な酸化還元挙動を示す、その酸化還元電位はターミナル配位子Lや架橋カルボン酸イオンの違いによって制御できる。周辺配位子としてdimethylaminopyridine (dmap) を有し,中央ユニットのみRu3骨格の架橋カルボン酸イオンを安息香酸イオンとし,それ以外のRu3骨格がプロピオン酸イオン架橋となるように設計することにより中央から周辺への電位勾配を有するRu3デンドリマー錯体が合成できた。サイクリックボルタモグラム(CV)が示すように酸化還元電位が周辺部から中央に向かって正電位側にシフトしている。この錯体のCVでは中央部に関してのみ可逆性が非常に悪くなっており、このことがデンドリマーの傾斜によるものではないかと考えられたが、電極への吸着の可能性も考えられた。そこで吸着(析出)が起こりにくいように周辺配位子のdmapにさらにアルキル基を導入したデンドリマーを合成したところ、CVの中央部分の可逆性がよくなった。その結果dmapデンドリマーの可逆性の悪さは電位勾配によるものではないことが明らかになった。
また、電位勾配による電子移動の加速を期待してデンドロン型の7量体をCoポルフィリンに導入し酸素還元触媒能を調べたところ、期待に反して傾斜の無いデンドロン錯体を有する触媒よりも悪いことが分かった。これは電位勾配を付ける為に連結部を安息香酸イオン架橋Ru3としたため、逆にこのユニットからポルフィリンへの電子移動が起こりにくくなったためと考えられる。