表題番号:2009A-056 日付:2013/03/05
研究課題抗腫瘍性天然物クレロダン型ジテルペンの不斉全合成研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中田 雅久
研究成果概要
本研究では、クレロダン型ジテルペンの一つである(+)-bucidarasin Cの不斉全合成研究を行った。不斉全合成研究の鍵反応として、渡環型連続マイケル(TATM)反応と渡環型Diels-Alder(TADA)反応による(+)-bucidarasin Cの中心骨格構築を検討した。パン酵母還元により、高収率、高エナンチオ選択的に創製したキラルビルディングブロック、(2R,3S)-2-benzyloxymethyl-3-hydroxy-2-methylcyclohexanoneから出発し、Wittig 反応、Crabtree 触媒を用いた立体選択的接触還元により、連続する不斉中心の構築を達成した後、数工程の変換を行い、生成物の6員環部分を開裂することにより、鎖状化合物とした。引き続き、炭素鎖伸長を行い、椎名試薬による大環状ラクトン化を経由し、TATM反応とTADA反応の反応基質の合成に成功した。このTATM反応とTADA反応は、C-5位、C-9位の不斉四級炭素を含むcis-デカリン骨格の2種類の異なるジアステレオマーを、それぞれ高立体選択的に与えた。本反応はcis-デカリン骨格を有する多くの天然物合成に応用が可能と考えられ、新たな天然物合成の手法を開発したといえる。TADA反応によって得たcis-デカリン骨格は(+)bucidarasin Cの全合成に必要な不斉四級炭素を含む4連続不斉中心、C-4位C-C結合、C-2位の水酸基を有しており、さらなる官能基変換を経て、全合成が達成できると確信している。また、TATM反応とTADA反応の基質合成においては、本研究室で開発したキラルビルディングブロック(2R,3S)-2-benzyloxymethyl-3-hydroxy-2-methylcyclohexanoneの活用が一つの鍵であるため、この天然物合成への適用範囲が広がったことで、有用性を示すことができた。