表題番号:2009A-051 日付:2010/04/02
研究課題極超音速エアインテークの遷音速特性に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 佐藤 哲也
研究成果概要
 本研究では、極超音速/超音速空気吸込み式エンジンに使用するエアインテーク(空気取入口)の遷音速時における非定常特性を解明することを目的とし、超音速風洞実験によってインテークバズという非定常現象を実験的に調査した。
 インテークバズとは、遷音速領域(Mach 1.3-2.0)において、インテーク表面の境界層剥離によって起こる自励振動で、エンジンの停止や構造破壊を起こす危険性があるため、エアインテークの作動領域が狭くなるという問題が生じている。そこで、JAXAで開発中の予冷ターボジェットエンジンの矩形インテークモデルを新規に設計、製作し、Mach 2-3の風洞実験によって、遷音速領域における空力特性データを取得するとともに、バズの発生しない安定作動領域を調査した。
 実験の結果、本エアインテークモデルにおいて、始動状態または不始動状態からバズへと遷移する現象を観測した。このとき、性能曲線上において流量捕獲率は減少し、全圧回復率は上昇することがわかった。シュリーレン撮影と非定常圧力計によって、バズの振動周波数は20 ~ 30 Hzであることが観測され、ランプ側の流れが剥離していることより、Dailey型バズであることを確認した。また、インテークのスロート面積を小さくしていくにつれて、バズの周波数が減少し、最終的にバズが停止することを確認した。さらに、亜音速ディフューザの後ろ側にバイパスドアを設け、そこから抽気をすることによって、バズを停止させる手段を提案し、実証した。
 現在は、実験と並行して、CFD解析によって風洞実験で見えなかったインテーク内部流れの様子を検証することを試みている。今後の課題としては、バズの発生タイミングを明確化すること、抽気量のバズに対する影響を調査すること、バズの周波数の支配パラメタを明らかにすることがあげられる。