表題番号:2009A-050 日付:2010/04/07
研究課題限界集落の農地の縮減に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 後藤 春彦
(連携研究者) 理工学術院 助教 佐藤 宏亮
(連携研究者) 理工学術院 助手 遊佐 敏彦
研究成果概要
 新潟県十日町市松代地域を対象に、文献資料調査、ヒアリング調査により棚田の形成過程や農道や古道などの歴史的変遷、地域の歴史文化、地形や水系などの風土条件などを把握した。また、本学の伝統的なアプローチである発見的方法に依拠したフィールドワーク、および地域住民との意見交換を通して耕作放棄地の発生の実態や地域の暮らしについて詳細に調査を行った。
 農住地域における農景観は地形水系、生活技術の蓄積など複雑かつ多様な人間と自然との関係が蓄積された、地域の記憶や技術の表現であるが、高齢化社会を迎え、深刻な後継者不足が問題となる中、無秩序な耕作放棄地が発生しつつある実態が明らかになった。また、耕作放棄地の発生の過程で、近代になって圃場整備がなされた平野部の広大な農地に耕作地の集約が進んでいる実態も明らかとなった。一方で、当該地域の代表的な農景観である棚田をはじめ、比較的広域的なスケールのランドスケープと、生活空間における地域の暮らしの表現としての生活景という異なるスケールの景観の相互関係や、季節変化を紐解く中で、水系ネットワークや多雪との共生を図ってきた生活技術の中に、農景観を支えるシステムが介在していることが浮かび上がってきた。これにより、農景観と日々の暮らしとの相互関係を包括的に紐解きながら、維持管理に向けた方法論を解明して行く手掛かりを得た。
 当該地区は早稻田大学セミナーハウスが整備されて以来、地元ボランティア組織の献身的な活動や、本学の学生組織の活動などが継続的に行われ、大学と地域との良好な関係が築かれてきている。本研究を通して、これまで培ってきた信頼関係が強化され、行政や地域住民との協働による研究体制の構築へと発展しつつあることも本研究の大きな成果である。