表題番号:2009A-048 日付:2012/10/30
研究課題コラーゲン3重らせんを模倣した新しいバイオマテリアルの創製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小出 隆規
研究成果概要
 本研究は、コラーゲン様3重らせんペプチドをボトム-アップの自己集合によって超分子化することによって、新しいバイオマテリアルを創製することを目的として行った。研究はほぼ順調に推移し、当初計画していた超分子のデザインのひとつをもちいることによって、コラーゲン様3重らせん構造を有するシート状の超分子集積体を作成することに成功した。
 具体的には、自己集合によりヘテロ3重らせんを形成する化学合成コラーゲン様ペプチドの両末端にビオチンを導入し、この3重らせんペプチドにアビジンを加えることによって相互にマルチバレントに架橋した。当初は、ゲル状の超分子が生成するものと予想されていたが、意外なことにこの系ではシート状の超分子が得られた。この超分子は、無色透明であり、厚さ5-10 マイクロメートル、面積は平方ミリメートルのオーダーであった。この厚みはロッド状の3重らせんペプチドが縦に約1000ユニットが連結された長さに相当する。また、この超分子の形状や大きさは、ペプチドの分子のデザインによって変化することが明らかになった。
 これまでに多くのペプチド超分子が作成されているが、そのほとんどは紐状やゲル状、リボン状のものである。その一方で、水溶液中からシート状の超分子が得られたという報告はほとんどない。したがって、このシート状超分子生成のメカニズムの解明は、あたらしい研究テーマとして今後につながるものとなった。また、興味深いことに、ペプチド、ビオチンの仕込み量比にかかわらず、生成したシートの組成はほぼ一定であった。
 さらに、シート表面のビオチンあるいはアビジンの機能を利用して表面の修飾が可能かどうかについて検討した。その結果、アビジン―蛍光色素コンジュゲートをもちいることによって、ビオチンを表面に持つシートの表面にのみ蛍光基を導入することに成功した。
 しかし、本シートをバイオマテリアルとして使用するには、物理的な強度が不足していた。今後より安定な構造体を構築するために、クロスリンキング等の工夫が必要である。