表題番号:2009A-027 日付:2010/04/02
研究課題ホレースマン・スクール初等教育研究における社会構成主義的プロジェクト教育論の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 准教授 佐藤 隆之
研究成果概要
本研究は、アメリカのコロンビア大学ティチャーズ・カレッジ附属小学校ホレースマン・スクールで行われたプロジェクト・メソッドの実験に注目して、近年注目を集めている社会構成主義の立場に立つ学習がどのように実践に移されていたかを解明することを主たる目的とする。ホレースマン・スクールにおいては、キルパトリックが提起したプロジェクト・メソッドを実践する研究が1910年代後半から1920年代半ばにかけて行われた。そのなかでは、教科の学習と並行して、人格形成に主眼をおいた市民性(citizenship)育成のプログラムが開発されていた。今回の研究により、そのプログラムの原点は、やはりコロンビア大学ティチャーズ・カレッジの研究者が関わっていた教会学校であるユニオン宗教学校(Union School of Religion、以下USRと記す)における教育実践にあることが判明した。USRでは、宗教教育の先駆者コー(George A. Coe)や、心理学を援用した宗教教育論を展開したハーツホーン(Hugh Hartshorne)が中心となって、社会的・協同的経験を重視する宗教教育が行われた。それを実現する手段として、キルパトリックのプロジェクト・メソッドが採用され、各教師によって各種プロジェクトが展開された。教科書を用いながらも、生徒から自発的に出された問い(たとえば、「神の本性とは何か」)について、教師が支援しながらディスカッションして答えを導きだすことが試みられた。教条主義的ではなく進歩主義的な宗教教育がプロジェクト学習において実践されていたわけであるが、そこでは神や聖といった概念すらも、超越的なものとして上から授けられるのではなく、協同的学習において構築され共有されるという立場が貫かれている。この宗教学校における取組にも影響を受けながら、ホレースマン・スクールのプロジェクト・メソッドの実験が推進されていたことが明らかになった。