表題番号:2009A-016 日付:2010/04/11
研究課題アメリカ合衆国における現象学的社会学運動の展開過程と科学共同体の構築過程に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 那須 壽
研究成果概要
1)本研究は、60年代後半以降の社会学の世界規模での転換の一翼を担った、いわゆる「現象学的社会学」というパラダイムの展開過程をひとつの運動と位置付けたうえで、それを事例として取り上げ、新たなパラダイムの展開過程において、科学共同体がいかにして形成され、それが当のパラダイムの展開にとっていかなる役割を果たしたのかを、第一次資料に拠りながら知識社会学という枠組みのもとで実証的に明らかにすることを目指して構想された。
2) そうしたグランド・プランのもとに、①当該「運動」を世界に向けて発信した「ボストン・グループ」のキーパーソンといってよいジョージ・サーサス(George Psathas) ボストン大学 (Boston University) 名誉教授へのインタヴュ、②彼が顧問となって1972年から刊行されはじめたニューズレター『現象学的社会学』のバックナンバーの収集とその分析、③彼がアメリカ社会学会大会、世界社会学会大会等で関連セッションを組織するために関係者たちと交わした書簡やプログラムの収集、整理、分析、④彼が開催・運営した関連ワークショップの組織化の実態調査、を企画した。
3) 企画された研究のために、既収集のニューズレター『現象学的社会学』を読み込み、またそれ以外の諸資料で補足しながら、1962年から1985年までのアメリカ合州国における当該運動に関するラフ年表を作成したうえで、二度にわたって渡米し (8月28日~9月3日、10月28日~11月3日)、約3時間に及ぶインタヴュを行い、またサーサス教授が保管している書簡の調査、ならびに関連の学会大会やワークショップ、カンファランスのプログラムの収集を行った。
4) インタヴュはトランスクリプト化が終了し、また書簡とプログラムに関しては、日本に持ち帰ったうえですべてをコピーし、現在、それらに関する詳細な分析を進めているが、すでに国際学会でも、その途中経過を報告したように、それらの資料のこれまでの概略的な分析によって、新たなパラダイムが浸透、展開していくうえで、研究と教育を通したインターパーソナルな交流の果たす役割、そうした交流をプロモートするキーパーソンの役割の重要性が明らかになっている。