表題番号:2009A-015 日付:2010/04/13
研究課題文学学術院所蔵「木下尚江資料」の整理およびデータベース化に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 中島 国彦
研究成果概要
 文学学術院には、かつて木下尚江の遺族木下正造氏から譲っていただいた自筆資料類がある。その「木下尚江資料」の整理・公開には、かつて柳田泉教授・稲垣達郎教授らが当たってきたが、その多くは未整理のままになっていた。教文館版『木下尚江全集』には、2002年までに整理された資料が活字化されて翻刻されたが、その他の資料については、まだ多くの未発表資料が存在する。今回それの整理を集中して行い、可能な範囲で翻刻紹介しようというのが、この研究プロジェクトの内容である。
 まず、ホームページでの公開を前提としたデジタル画像の製作を試み、整理された部分からファイルに挿入し、翻刻して小冊子の形で公開を試みた。研究協力者の支援を得て、2009年9月までにデジタル画像の製作を実施し、約400コマを完成した。年度末までに、受け入れ資料のうち未発表の「論説草稿」の部分を、大学院文学研究科の博士課程院生を含めたチームを作って翻刻、それに解題を付す作業を行った。その過程で、各資料の史的意味の分析を行い、その一端は、論文の形でまとめた。今回紹介したものは、明治20年代後半の論説の草稿で、それは上京するまでの時期に郷里信州で盛んな言論活動をした時のものである。それぞれの資料は、執筆時期があいまいなものが多く、編年には困難が生じている。今後は、資料の内容を吟味しつつ、更なる意味づけを行って生きたいと考えている。文学部ホームページでの公開に関しては、文学学術院のサーバーの変更計画に関連して、2009年度中の公開が不可能になり、次年度以降に持ち越された。
 この計画は、幸い単年度で終わることなく、重点領域研究「世界と共創する新しい日本文学・日本文化研究」(2009年11月採択)に引き継がれ、プロジェクト研究所「早稲田大学国際日本文学・文化研究所」の活動と重なり、来年度以降も継続することになっている。デジタル化の作業、その翻刻としての資料集の刊行、ホームページ上での公開、こうした流れが出来たことは、この研究費を使った作業がさらに飛躍することを示していると思う。