表題番号:2008B-314 日付:2011/11/02
研究課題イタリアの地場産業地域における技術継承に関する実態調査研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 本木 弘悌
研究成果概要
 これまで地域経済を支えてきた、いわゆる地場産業の縮小は日本のみにならず、先進諸国においても深刻化している。とりわけ、後継者問題をはじめ産地の将来を担う人材の欠落が顕在化し、生産工程の欠落を免れない産地も少なくない。また、後継人材の絶対量不足による技術継承の困難も同時に顕在化している。今後も技術者の高齢化かは明白であり、産地と技術の存続のために、いかに技術の継承を行うか、打開策が模索されている。
 そこで本研究では地場産業地域における技術継承の持続性について、実態調査をもとに明らかにする。調査対象地域はイタリア中北部の地場産業地域とした。イタリアはヨーロッパにおいても有数の製造業が盛んな国であり、とりわけ地域に定着した産地が全国的に多数存在している。そのなかからFriuli-Venezia Giulia州、Pordenoneの家具産地を調査した。イタリアには主な家具産地が3つあり、対象産地は価格と品質で中級品から高級品の製品群を供給する産地に位置いちづけられ、近年ではロシアなどの新興国への輸出が堅調となっている。技術継承に関しては、産地内の技術継承システムと企業内の技術継承システムが並存して機能していることが明らかになった。イタリアでは行政による産業支援は、州によりそのレベルが異なり、政権交代によりその内容も変化するため、もともと行政へ期待が薄い。そのため、産地内では労働力の教育機関を企業が資金を出し合い運営する産地内技術継承システムが多くの産地ににみられる。また、企業内におていても技術継承のシステムはかなり整備され、効率的に行われるようになり、その実態が本調査によって明らかになった。