表題番号:2008B-312 日付:2013/05/16
研究課題線形代数学に関する基礎知識習得を中心とした中等教育の数学カリキュラムの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 穴田 浩一
研究成果概要
 通常、線形代数学に関する基礎知識というと、「ベクトル」や「行列」の項目が挙げられるが、これらは高校2年生になってようやく学習する項目となっている。本研究では、それ以前の中学から高校1年までに学習する項目の中で、線形代数の基礎知識の習得を意識したものをどのような形で入れることができるかという点を考慮しながら、そのための教材として利用できる可能性のあるもののうちの1つに焦点を当てて深く考察を行った。
 具体的には、組合せ論(数え上げ)に着目した。これは、中等教育の中ではちょうど「数学A」の「集合と場合の数」の項目に該当する。これを採り上げた理由は3つある。第1に、「ベクトル」や「行列」の項目では線形代数学の理解のために重要な「集合」や「論理」に基づいた教材や演習問題がどうしても不足がちになるため、それらを補うためにも、「集合と場合の数」の中に線形代数学に関する基礎知識を習得させるための教材や演習問題が必要である、という点である。二つ目の理由は、現在の中等教育で行なわれている数学のカリキュラムでは「情報数学」あるいは「離散数学」と呼ばれる分野の比重が比較的小さくなっているが、将来においてその比重が増してくる可能性が大いにありうる、という点である。そしてもう一つ、数え上げに関連する問題は、この項目だけでなく中学数学や小学算数などの項目でも活用できる可能性があり、この項目でこのような教材や演習問題を採り上げることにより中等教育全体のカリキュラムをより広く、さらにはより深く考察できる、という点が三つ目の理由である。
 そのような中で、本研究では「第2種スターリング数(これをS(n,k)と書く)」を扱った。これはn個の異なるものをk個のグループに分ける場合の数を考える問題に現れるものである。この種の問題の解法には、ありうる全ての具体的な事象に場合わけをする方法と、形式的な計算法則(アルゴリズム)を用いて計算する方法が考えられ、ここでは後者の方法(アルゴリズム)について深く考察を行った。それらの成果は論文``An Algorithm for Explicit Formulas of Stirling Numbers of the Second Kind''と``A Remark on An Algorithm for Bell numbers''にまとめて発表した。