表題番号:2008B-286 日付:2009/03/03
研究課題協働的学習における参加のプロセス
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院日本語教育研究科 教授 舘岡 洋子
研究成果概要
 申請者は2005-2007年度科研にて、教室での協働と学習との関係を認知・情意の両面から検討した。その結果、協働的な活動が学びとなるには、①参加者が互いに他者のリソースとなっていること、②他者を媒介として自己の理解や思考の見直しが起きること、③活動が関係性に支えられ、動機づけを高めていることが観察された。この3つのプロセスは同時に現れている。学習者たちはこのプロセスを共構築しており、そこに「参加」することによって学ぶということがいえる。

 本研究は、科研での上記成果をふまえ、さらに時間の観点を入れた。授業は学期中同一クラスで繰り返され、日々変化していく。そこで、1学期間を通して協働的な学習活動への参加の軌跡を追う必要がある。これは、クラス全体が時間をかけ学習コミュニティーを形成していくプロセスであり、また個人がそこにどのように参加するかというプロセスでもある。そこで、1回の協働的な授業場面を切り取った形での観察だけでなく、時間経過を追って、協働的な学習活動をとおして教室、参加者がどのように変容していくかを追うことを課題とした。

 学期はじめに協働的な活動に十全な参加ができなかった学習者が、学期末には自ら積極的に参加するにいたったプロセスを授業観察記録とインタビューにより明らかにした。①時間軸の中で参加の態度は変容すること、②「参加する/しない」は個人のみの問題ではなく、他者との関係性の構築とかかわっていること、③「他者との関係性」と「自分自身の学びの位置づけ(自律性)」との往還の中で、活動の成功体験を繰り返すことにより動機づけが高まり、好循環が生まれ、参加し学ぶという経験を生み出していったこと、が示唆された。今後は、これを発展させ、時間軸の中での変化過程をクラス全体という視点でさらに追究していきたいと考えている。