表題番号:2008B-280 日付:2009/03/17
研究課題社会的能力アプローチによるサステイナビリティ学の構想
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院アジア太平洋研究科 教授 松岡 俊二
研究成果概要
1. 研究の目的
 本研究「社会的能力アプローチによるサステイナビリティ学の構想」は、人間活動の濃密に集約された空間構成体である「都市」を対象として、「持続可能な都市」の再検討を行うことにより、「サステイナビリティ(Sustainability、持続可能性)」とは何かを考察する。

2. 研究の方法
 サステイナビリティを単なる「到達目標(結果)」あるいは「均衡」として定義するのではなく、持続可能な都市を創出しようとする「過程(プロセス)」そのものから、サステイナビリティを明らかにすることを試みた。こうしたプロセスを解明するため、松岡らが研究開発してき社会的能力アセスメント(SCA)手法を都市研究に応用した。

3. 研究の対象と実施
 研究対象はコンパクト・シティ(持続可能都市、環境首都なども含む)を標榜する国内外の都市とし、海外都市などを対象とした文献調査と北九州市や広島市などへの現地調査を組み合わせて研究を実施した。

4. 研究の成果
 国内外のコンパクト・シティが果たして持続可能なものなのかどうかを、先行研究に依拠しつつ、人口密度と都市の自動車利用やエネルギー利用などとの相関関係から分析した。こうした研究から、従来のコンパクト・シティをめぐる研究には、大きく言って2つの欠点があり、その解決方法を考察した。
 第1は、コンパクト・シティは、一般には人口密度と複合的土地利用で語られることが多いが、明確な定義がなく、国際比較研究が困難にしている。また、都市政策としてコンパクト・シティの形成を考えた時、各都市はそれぞれの都市の成り立ちに大きく依存しており(強い経路依存性)、都市の持続性にとってはこうした歴史性やどのようなプロセスで今後の都市形成をおこなうのか、が重要である。
 第2は、コンパクト・シティとサステイナビリティとの関係は、国際的には負の相関性、弱い関係性、限定的な相関性しか観察されず、コンパクト・シティの持続性に関する証拠が乏しく、曖昧である点である。日本の都市は公共交通の発達により、例外的に人口密度の高さと自動車利用の低さが確認されたものの、こうした結果の一般化には慎重であるべきであろう。