表題番号:2008B-264 日付:2009/03/17
研究課題高脂血症はウサギ椎間板の変性を促進させるか?
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 准教授 金岡 恒治
(連携研究者) 筑波大学大学院人間総合科学研究科 大学院生 辰村正紀
研究成果概要
【背景】腰痛の原因の一つとされる椎間板変性症は、加齢に伴いある一定の頻度で発生するため、進行する高齢化社会により今後増加することが予測される。この椎間板変性の促進要因として、加齢、遺伝的要因、に加えて肥満、重労働、スポーツ活動などの力学的過負荷が挙げられている。また我々の行った中高齢者を対象とした横断調査の結果として、高脂血症などの生活習慣病関連因子も椎間板変性促進因子として疑われている。
 高脂血症により椎間板への栄養動脈である分節動脈に粥状硬化が生じると髄核への栄養供給が阻害され、プロテオグリカン生成が抑制され椎間板変性が生じると推察される。この際、椎間板内の低酸素状態に反応し、血管新生を促すサイトカインであるVEGF(vascular endotherial growth factor)が発現し、椎間板内の血管新生が生じることが疑われる。Agrawalらは、椎間板内の低酸素状態が反応性にHIF(hypoxia inducible factor)を介してVEGFを発現し血管新生が生じることを報告している。高脂血症が椎間板変性を促進させるか否かの検証のために、高脂血症ウサギを対象として、椎間板内のVEGF発現を検証する研究を行った。
【仮説】高脂血症ウサギの椎間板内にVEGFの発現を認める。
【方法】遺伝的に高脂血症を発症するWatanabe Heredity Hyper-Lipidemia (WHHL)ウサギ3羽(平均6ヶ月齢)を対象とし、屠殺後に下位胸椎から仙椎までの腰椎を摘出し、合計12椎間の椎間板を採取し組織標本を作成し、VEGFを一次抗体として免疫染色を行った。コントロールとして正常ウサギ1羽の6椎間板を用いた。
【結果】高脂血症ウサギの12椎間板及び正常ウサギ6椎間板のいずれも線維輪、髄核組織内にVEGFの発現は認められなかった。
【考察】高脂血症が椎間板変性を促進する機序として、動脈硬化による椎間板内の低酸素状態を疑い、高脂血症ウサギ椎間板内のVEGF発現を評価したが、その発現を認めなかった。この結果から、高脂血症が椎間板変性を促進する機序としては本仮説とは異なる機序によるものと推察する。