表題番号:2008B-262
日付:2009/03/28
研究課題伸張-短縮サイクル運動における筋パワー発揮特性に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | スポーツ科学学術院 | 助手 | 宮本 直和 |
- 研究成果概要
- さまざまなスポーツ競技において、短い時間の中で爆発的に大きな力を発揮することは優れた競技成績をおさめるための重要な運動能力の一つである。このような運動能力は筋パワーとして位置づけられ、パワーが競技パフォーマンスの決定因子の一つであることは疑う余地がない。筋の短縮速度(関節運動の角速度)が増すと発揮できる力は小さくなるため、力と速度の積で表されるパワーは最大筋力の約30%の負荷を与えたときに最大になる(金子ら、 1978)。このことから、競技力向上を目的としたトレーニングにおいては、最大筋力あるいは最大挙上重量の30%の負荷がパワー向上に最も効果的であると考えられている。ただし、これらの知見は、反動を用いない動作を対象として行われてきた研究によるものである。そこで本研究では、反動の有無が負荷-関節パワー関係に及ぼす影響について検討することを目的とした。
健常な成人男性8名が被験者として参加した。被験者は、反動を用いない状態(NoCM条件)および反動を用いた状態(CM条件)で、0, 2.5, 5.0, 7.5, 10.0, 12.5, 15.0kgの負荷に対して最大努力による肘関節伸展動作を行った。その際、上腕三頭筋外側頭および内側頭、上腕二頭筋から筋電図活動を導出した。
CM条件の平均肘関節伸展パワーは、0kg以外の全負荷において、NoCM条件よりも有意に大きな値であった。また、肘関節伸展パワーが最大となる負荷強度は、NoCM条件では5.0kg、CM条件では7.5kgの負荷であった。筋電図活動は、負荷および反動の有無によって有意な変化は認められなかった。
これらの結果は、最大関節パワーを得るための負荷強度は反動の有無によって異なること、また、反動による関節パワーの増強は伸張反射などの筋活動の違いではなく、弾性エネルギーの蓄積・再利用によるものを示唆するものである。本研究から、反動を用いたパワートレーニングには、従来考えられている最大強度の30%よりもさらに高い負荷の方がパワー増強に効果的である可能性が示された。