表題番号:2008B-252 日付:2009/03/26
研究課題高齢者の唾液中ストレスマーカーに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 赤間 高雄
研究成果概要
【緒言・目的】唾液に含まれる分泌型免疫グロブリンA (SIgA)は、感染の初期防御機構において重要な役割を果たすが加齢により低下すると考えられている。しかし、適度な身体活動によって唾液SIgA分泌が高まることも示されている。そこで本研究では、高齢者の日常における身体活動が唾液SIgA分泌に及ぼす影響について、都市部の対象者で検討すること(課題1)、さらに日常の生活習慣が高齢者の唾液SIgA分泌に及ぼす影響について検討すること(課題2)を目的とした。
【方法】課題1の対象は東京都三鷹市在住の前期高齢者118名、後期高齢者166名とし、それぞれ身体活動量を昇順並べて3群に分け(前期高齢者:115および250 kcal/dayを境に3群化;後期高齢者:85および155 kcal/day)、唾液SIgA分泌速度と身体活動量との関係を検討した。課題2の対象は三鷹市在住の前期高齢者23名、後期高齢者15名とした。Quality of lifeを評価するSF-36を用いて各高齢者の身体的健康度と精神的健康度を評価した。それぞれの健康度について、日本国民の平均値と比べて高い群および低い群に分け、SIgA分泌速度との関係を検討した。
【結果】課題1:統計的に有意ではないが、前期高齢者では身体活動量が最も多い群、後期高齢者では中程度の群でSIgA分泌速度が他の二群と比較して高い傾向が認められた。課題2:前期高齢者では精神的健康度が高い群のSIgA分泌速度が低い群に比べて有意に高かった(p < 0.05)。また統計的に有意ではないが、後期高齢者では身体的健康度が低い群と比較して高い群においてSIgA分泌速度が高い傾向を示した。また精神的健康度おいても同様の結果が得られた。
【考察】課題1において、後期高齢者では1日の身体活動量を85~155kcal/day程度に維持することで、口腔内免疫機能を向上させる可能性が示唆された。課題2では精神的因子が唾液SIgAの分泌に影響を及ぼしている可能性が考えられた。