表題番号:2008B-250 日付:2010/10/25
研究課題健康情報プロモーション受容者の認知・行動モデルの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 中村 好男
研究成果概要
身体活動・運動を通じた健康づくりを推進していくためには、「身体活動・運動は健康に良い」という科学的知見の蓄積では不十分であり、その知見を「国民に対して如何にプロモーションし」「国民の身体活動・運動の実施を促すのか?」という課題を体系的に整備することが必要不可欠である。我々は、上述の問題認識に基づき、身体活動・運動の実施を促すプロモーション効果の予測・検証を可能とするような定量モデルを将来的に構築することを目指して、本研究を行った。
 本年度は、「健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド2006)」と、「筋力トレーニング(筋肉を鍛えること)」に注目して、その認知状況と効果的なプロモーション方策の開発に向けた研究を行った。
 社会調査モニターを対象に調査を行った結果、エクササイズガイド2006の認知状況は、「内容を知っている」が1.4%、「聞いたことはあるが内容は知らない」が11.0%、「聞いたことがない・今回の調査で始めて知った」が87.6%であり、他の健康づくり施策より認知状況が低かった。しかし、エクササイズガイド2006を認知している者の方が、歩行習慣者の割合が多かった。他の健康づくり施策の認知は、歩行習慣との関連性が認められなかった。これらの結果から、エクササイズガイド2006のプロモーションは十分に行われていないものの、そのプロモーションは歩行習慣者の増大に寄与する可能性が示された。
 また、筋力トレーニングの認知状況について評価したところ、米国スポーツ医学会やエクササイズガイド2006で筋力増強運動として扱われている運動種目以外に関しても、「水泳」は55.6%、「ウォーキング」は32.5%、「ストレッチ」は31.7%、「ジョギング」は30.4%、「ヨガ」は18.0%、「掃除」は13.9%、「子どもと遊ぶこと」は9.4%の者が「筋肉を鍛えることを目的とした運動」と認識していた。そのため、成人が認識している筋力トレーニングと、米国スポーツ医学会やエクササイズガイド2006が推奨する筋力トレーニングとの間には不一致があることが示唆された。