表題番号:2008B-248 日付:2009/11/11
研究課題ミラーシステムに注目した全身運動の学習メカニズムの解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 彼末 一之
(連携研究者) スポーツ科学学術院 助手 坂本 将基
研究成果概要
サルが餌を「掴む」という動作を行ったときに反応するニューロンが、自らが動作を行わなくとも他の個体が同じ動作を行うのを「見た」ときに反応が見られた(Rizzolatti,2004)。これをミラーニューロンと呼び、ヒトにおいて、サル同様に運動前野を中心に反応が起こることから、ミラーニューロンシステムと呼ばれている。本研究では未経験者にとってイメージの困難であると考えられる宙返り動作と誰にでもできるジャンプ動作の映像を見たときに経験者と未経験者では脳のミラーニューロンシステムの活動がどのように異なるのかをTMSを用いて運動誘発電位(motor-evoked potential:MEP)により、検討することとした。被験者は健常な男女14人(20~23歳)であり、うち経験者群7名、未経験者郡7名で行った。被験者は椅子に座り、右腕を肘掛に乗せた状態で正面から撮影した立位姿勢(control)、宙返り動作(salto)、ジャンプ動作(jump)と、横から撮影したcontrol、salto、jumpの6つの映像を観察した。各課題観察中に、TMSにより刺激を行い、三角筋前部線維と三角筋中部線維からMEPを記録した。経験者と未経験者のsalto観察時におけるMEP振幅には、有意な差はなかった。課題間においてもcontrol観察時と比べsalto観察時やjump観察時に有意な差は見られなかった。しかし、全体として経験者はsalto観察時とjump観察時にMEPが増加する傾向が見られ、未経験者にはjump観察時にMEPが増加し、salto観察時にはMEPが減少する傾向が見られた。今後,被験者数を増やしていけば有意な差が現れる可能性も残っている。更に、正面からの動作を観察したときよりも横からの動作を観察したときの方がADとMD共に経験者に大きなMEPの増加傾向が見られたことから同じ動作であっても観察する方向によってミラーニューロンシステムの活性が違うことが示唆された。