表題番号:2008B-241 日付:2009/03/17
研究課題消化管におけるICC類似細胞の形態学的解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 小室 輝昌
研究成果概要

 消化管の運動は、交感、副交感の自律神経によって調節されていると、考えられて来たが、近年では、これに加えて、内在性の腸管神経系とカハールの介在細胞(interstitital cells of Cajal:ICC)が制御機構の一員として、重要な役割を担うことが明らかとなっている。ICCは、消化管運動のペースメーカー或は神経からの信号を平滑筋に伝える興奮伝達機能をもつことが証明されているが、ICCの研究が進むなかで、更に、ICCとは細胞学的に異種類似の細胞の存在が判明し、平滑筋運動の包括的理解のための新たな課題となっている。ICCは線維芽細胞に似た特徴を示す間葉系の細胞で、c-kit遺伝子の支配を受けるKit受容体を細胞膜上に持つことから、Kit抗体を用いた免疫染色により陽性細胞として識別される。一方、本研究で注目する類似の細胞はKit染色陰性で、その分布の詳細は、これまでのところ不明である。
 そこで、モルモット小腸および大腸を材料として、筋層におけるICC類似細胞の分布や他細胞要素との関係を明らかにすることを目的として、まず、間葉系細胞に特異的にみられるCD34抗体の免疫染色による描出を試みた。凍結切片では、小腸筋層内にCD34陽性細胞の存在は観察できたが、二次元的広がりの中の分布、ネットワークを知るための筋層剥離伸展標本では、充分な観察像は得られなかった。固定の強度など(ザンボニ固定、パラホルムアルデヒド固定、アセトン固定など種類、時間、濃度)を調節し、なお検討を続行している。免疫染色の不調を補うため、電子顕微鏡による微細構造上の検索に重点を移して観察を行い、モルモット小腸筋層に、ICCと異なる特徴を持ち、かつ、線維芽細胞と類似した細胞が、神経終末、平滑筋細胞と接着装置により結合するのを認めた。これらの所見は、平滑筋の運動制御に関与するKit抗体染色陰性のICC類似細胞に相当するものと推定した。