表題番号:2008B-234 日付:2009/03/10
研究課題食行動が対人コミュニケーション機能に及ぼす影響の社会心理学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 鈴木 晶夫
研究成果概要
現在の日本は様々な食品・食事形態が選択可能であり、このような中で「食」に対する態度はどのように形成され、健康とどのように関連しているのか。先行研究では、小中学生や、短大や大学の学生、高齢者を対象としたものが多い。本研究では、男子高校生を対象とした食態度、健康に関する調査を実施し、その相互関係について検討した。
【方法】1)対象は、東京都内男子高校生267名(平均年齢16.6歳)。
2)調査内容は、年齢、居住形態、家庭の食事の様子、食事への積極的な関わり、食の嗜好、健康習慣ストレス、疾病予防・危険回避行動、ストレスマネジメント、運動、家庭生活、現在の食生活への満足度。
【結果】1)食生活に関する「現状」と「願望」の項目についての因子分析の結果、「料理実践」「求心性のある家庭の食事」「既成食品への依存」「栄養素を重視した食」の4因子が得られた。各因子得点を算出し、「現状」と「願望」の差の検定結果は、「求心性のある家庭の食事」尺度以外の3尺度全てにおいて、有意差が見られた。
2)健康行動項目の因子分析結果は、「運動」「自己実現」「危険予防」「栄養考慮」「身近な人との相談」「ストレスマネジメント」「規則的な食習慣」の7因子となった。食生活の現状に関する4因子の因子得点と健康行動に関する7因子の因子得点との間の相関係数を算出した結果、「求心性のある家庭の食事」が、健康行動の尺度全てとの間に有意な正の相関を示した。
【考察】食生活においては、「積極的に料理に関わりたい」「既成食品はなるべくとりたくない」「栄養を重視した食事をしたい」と願っていても、現実ではかなえられていないことが明らかとなった。「求心性のある家庭の食事」は、健康行動の7尺度全てとの間に有意な正の相関を示し、食生活の現状に関する尺度の中で、「食の満足度」と有意な正の相関を示した。高校生が家庭の食に依存する機会の多い年代であることを考慮すると、家庭における食は健康習慣や食生活を含めた生活の質(QOL)を考える上で重要な要素である。