表題番号:2008B-206 日付:2011/03/16
研究課題水素製造のための非LH型で作動する低温水性ガスシフト用触媒の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 関根 泰
研究成果概要
水性ガスシフト反応は合成ガスのH2/CO比調整を行う重要な反応である.現在の水性ガスシフト反応用触媒は,一般的に高価であるため, より安価な触媒の開発が求められている.そこで我々はFeに着目した.安価なFeを用いて反応温度を低温化することができれば, 低コストでH2/CO比の調整を行うことができる.本研究ではFe2O3をベースとした新規触媒開発を目的とした.担体は市販のFe2O3(以降Fe2O3-1), もしくは沈殿法により調製したFe2O3を用いた.また,沈殿法においては前駆体にFe(NO3)3・9H2O,沈殿剤にそれぞれK2CO3,NH3aqを用いてFe2O3を調製した(それぞれFe2O3-2,Fe2O3-3).また,Fe2O3へのPd,Kの担持は含浸法を用いた.活性試験は固定床常圧流通式反応器を用いて行った.反応器は外径8 mm,内径6 mmの石英管を用いた.触媒重量は80 mg,反応ガスの組成は体積比でH2O/CO/H2/N2/Ar = 30/6/42/13/9 とし,W/F = 2.99 g-cat h mol-1(触媒重量80 mg)とした.反応温度は573 K,523 K,473 Kで,反応時間はいずれも185 min行った.反応直後の出口ガスをGC-FIDを用いて分析した.沈殿法で調製したFe2O3-2とFe2O3-3にPdを担持したPd/Fe2O3-2とPd/Fe2O3-3について,反応温度573 Kにて活性試験を行った.その結果,Pd/Fe2O3-3は活性がほとんど発現しなかったが,Pd/Fe2O3-2は工業用触媒よりも高い活性を示すことが確認された.この結果より,Pd/Fe2O3が高活性を示す要因として沈殿剤であるK2CO3中のKが関係していると考え,Kを含まないFe2O3-1にKを担持した触媒、KとPdを担持した触媒について活性試験を行った.その結果,K/Fe2O3-1は活性を示さなかったが,Pd/K/Fe2O3-1はPd/Fe2O3-2と同様に高い活性を示した.Fe2O3以外の担体においても高活性を示すかどうかを検討するために,Fe2O3と同様に酸化還元特性を持つCeO2と酸化還元特性を持たないSiO2にKとPdを担持したPd/K/CeO2とPd/K/SiO2について573 Kにて活性試験を行った.その結果,Pd/K/CeO2では活性が発現したが,Pd/K/SiO2は活性が発現しなかった.この結果より,酸化還元特性を有する担体,Pd,Kの三者のシナジー効果によって活性が発現する可能性が示された.PdとKの担持量が活性にどのような影響を与えるかを検討するために,様々な担持量で担持したPd/K/Fe2O3-1について活性試験を行った.K/Pd mol比が約2のところで特に高い活性を示すことがわかった.このことからKとPdの特定の構造が担体との相互作用により高い水性ガスシフト活性を示すと考えられる.