表題番号:2008B-201 日付:2010/04/11
研究課題新規メソ多孔体固体超強酸の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 松方 正彦
研究成果概要
Friedel-Crafts 反応は石油化学,ファインケミカルズ合成において重要な反応であり,一般にはAlCl3 やBF3 等のハロゲン化物が触媒に用いられている。グリーンケミストリーの観点からはこの反応にハロゲンを含まない固体酸触媒を用いることが望ましい。
シリカメソ多孔体は,高比表面積を有し,均一で精緻な化学修飾が可能なため,触媒担体として注目されている。本研究では,トルエンとベンジルアルコール(BzOH)を原料に用いたFriedel-Crafts ベンジル化をとりあげ,高比表面積化を図ることで活性の向上を期待してシリカメソ多孔体であるSBA-15に,硫酸化ジルコニアを担持し,触媒活性を検討した。
 実験に当たってはまずSBA-15を調製した。Zr 源にZrOCl2・8H2O を用い,含浸法にてSBA-15にZrO2 を担持し,その後硫酸処理をして硫酸化ジルコニアSBA15 I ( S/ xZr SBA-15 I ) を調製した。また,SBA-15 のシリカ骨格形成時にZrO2 を直接組み込む直接合成法も併せて検討した。こちらは,Si源のTEOSとZr源のZr 源にZrOCl2・8H2Oを混合し,乾燥,焼成を行い,その後硫酸処理をして硫酸化ジルコニアSBA-15 D ( S/ xZr SBA-15 D ) を調製した。ただし,x = nZr/ (nSi + nZr) = 0.03,0.06,0.09とし,nZr,nSiはそれぞれのモル数を表す。触媒のキャラクタリゼーションは,XRD,窒素吸着測定,ICP測定,Ar吸着熱測定により行った。トルエンのベンジル化は,110℃で4 h行った。なお,触媒の前処理は300℃,3 h焼成し,グローブボックス内で秤量した。
調製した触媒は硫酸処理後も細孔径や細孔容積の急激な減少は観察されず,550~800 m2 g-1 程度と比表面積も大きいままであった。特に,直接合成法で調製した触媒は,含浸法で調製した触媒よりも比表面積が大きい値を示した。また,反応は全て一次として整理できたので,それぞれの単位触媒重量当たりの一次反応速度定数を求めたところ,S/0.09Zr SBA-15 Dは市販の硫酸化ジルコニアの反応速度定数よりも大きい値を示した。これらのことから,直接合成法では,シリカ骨格中にジルコニアが高分散したため,高い活性が発現したと推察した。