表題番号:2008B-195 日付:2009/11/12
研究課題チューブリンに作用する天然物の不斉全合成と構造活性相関研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中田 雅久
研究成果概要
分子内 Diels-Alder (IMDA)反応を行う際、基質のジエノフィルのアリル位に水酸基を導入すると、その立体配置に誘導されて立体選択的なIMDA反応が進行するという新原理を見出した。また、その新原理を活用し、(-)-FR182877のAB環の立体選択的構築に成功した。分子内へテロ Diels-Alder (IMHDA)反応による(-)-FR182877のCD環の高立体選択的合成、分子内Heck反応によるF 環の構築および生成物であるアリルアルコールの異性化に成功し、 (-)-FR182877の不斉全合成を達成した。さらに、類縁体である(-)-FR182876 の不斉全合成、構造活性相関研究を行うことを目指し、より短工程かつ高収率な合成ルートの検討を行った。すなわち、これまで断続的に行っていたAB環、CD環の構築を連続して行うことで合成の効率化を目指した。IMDA反応前の基質の二級アルコールを保護した後にAc基の脱保護および二酸化マンガンによる酸化を行ったところ、電子求引性のアルデヒドが生じると同時に、空間的に近いジエンとジエノフィルからIMDA反応が自発的に進行、続いてIMHDA反応がワンポットで連続して進行し、四環式化合物を得ることに成功した。得られた環化体は、段階的に合成した所望の環化体と完全に一致した。結果として、段階的に行っていた工程と比べ、単離操作が容易となるだけでなく総収率が向上した。また、鎖状化合物から連続的IMDA-IMHDA反応により一挙に四環式化合物を合成する例は極めて珍しく、有機合成化学的に非常に興味深いと言える。現在、さらなる合成の効率化を目指し、分子内Heck反応とアリルアルコールの異性化が同時に進行する条件を検討し、また、生物活性試験を目的とする、歪んだ七員環部分を含む部分構造の合成を進めている。