表題番号:2008B-190 日付:2009/03/13
研究課題生体内における活性酸素種のリアルタイム計測法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 酒井 清孝
研究成果概要
透析治療時の血中活性酸素種(Reactive Oxygen Species : ROS)産生亢進によって引き起こされる酸化ストレスが、動脈硬化や透析アミロイドーシスなどの透析合併症を引き起こす原因と考えられている。本研究では、ROSの中で一酸化窒素(NO)およびスーパーオキシド(O2-)に着目し、高感度測定が可能な化学発光測定法と、血中の血漿タンパク質などの夾雑物質が測定に及ぼす影響を低減する膜分離法を組み合わせることで、リアルタイムで高精度かつ簡便にモニタリング可能なデバイスの創製を目指す。
中空糸透析膜により試料溶液中のROSを分離し、化学発光物質と反応させて発生する光を、光ファイバを介して検出するモジュールデバイスを開発し、その定量性および検出限界を評価した。NOの検出には発光物質としてルミノール、O2-の検出には発光物質としてO2-と特異的に反応する2-methyl-6-p-methoxyphenylethynyl Imidazopyrazinone (MPEC) を用いた。NOの定量性および検出限界を検討するため、NOドナーの濃度を変えることによって発生したNOを、ルミノール化学発光法により定量した。その結果、0.42 Mの濃度のNOを検出でき、NO濃度0.42-16.8 Mの範囲において、NOドナー濃度と相対発光強度積算値の間に1次の相関関係(R2=0.991)が得られた。透析治療中に発生するNO濃度は11.4±2.3 Mと推算されるため、本モジュールデバイスにより、透析治療中に発生したNOをリアルタイムで高精度にモニタリングできる。また、O2-の定量性および検出限界を検討するため、ヒポキサンチン-キサンチンオキシダーゼの反応系で発生させたO2-をMPEC化学発光法により定量した。その結果、本モジュールデバイスのO2-検出限界は0.6 nmol/minであった。透析治療中に発生するO2-量は12.6 nmol/minと推算されるため、本モジュールデバイスにより、透析治療中に発生するO2-をリアルタイムで高性能にモニタリングできる。
本研究で開発したモジュールデバイスにより、透析治療中に発生したNOおよびO2-の量をリアルタイムで高精度かつ簡便にモニタリングができる。