表題番号:2008B-188 日付:2009/02/17
研究課題イミグレーション時代到来に備えた地域情報の共有手法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 後藤 春彦
研究成果概要
 今後の都市計画・まちづくり分野において、「市民自治」の果たす役割がこれまで以上に大きなものとなり、都市やまちの経営管理にかかわるステークホルダーの一員として海外移民も重要な位置を占めると予想される。しかしながら、コミュニケーションツールと交流の場(公共空間)を持ち得ない現在の状況では、新旧住民間で将来的に大きなコンフリクトが生じることは必然である。
 イミグレーション時代の到来に備えたマルチリンガル化された的確な情報共有ツールと公共空間の提供の意義は極めて大きい。既存住民とのトラブルを減らし、海外移民の定住を促すとともに市民自治の大切な担い手としてまちづくりへの参加がすすむことにより、真の成熟社会をわが国の都市は獲得することになる。本研究によって、新旧住民双方が安心・安全に暮らせる多国籍コミュニティを創出し、新旧住民間の相互交流を促す共有手法を確立することをめざし、
(1)海外移民に必要なまちづくり情報と共有手法の成功事例の収集
(2)移住プロセスに対応したまちづくり情報ニーズの抽出
をこころみた。
あわせて、これまでの研究室の研究蓄積である、「まちづくりオーラルヒストリー」調査法および「まちづくり空間情報データベース」の編集法を活用し、
(3)既存住民と海外移民との相互補完・相互作用のあり方とそれを促す公共空間の提案
を行った。

その結果、移住者をはじめとする新規住民が必要とするまちづくり情報は時系列に従って効果的に伝えていくことが、移住・定住の促進、持続的なコミュニティ形成につながることを明らかにした。さらに、「口コミ」「自己体験」など、マスメディアでは伝えにくい情報の伝達手段とそのタイミングが課題として掲げられることを明らかにした。さらに、GISを用いた「まちづくり空間情報データベース」の有効性を確認した。
 これらの成果は、地域の歴史・文化、日常の生活情報や、緊急災害時も含め、今後必要とされうる多様なまちづくり情報を付加できる総合的なまちづくり空間情報システムとして応用できる潜在的な可能性を有している。