表題番号:2008B-159 日付:2009/02/27
研究課題粒子の集団運動と競合する多相系の界面ダイナミクス
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 山崎 義弘
研究成果概要
2枚のガラス板に挟まれた水と粉体の混合液をガラス板の隙間から乾燥させたとき、
水-空気界面の進行が粉体の存在によって不安定化し、乾燥後に残った粉体領域が迷路の
ようなパターンになることが実験的に知られている。
我々は、そのメカニズムを理解するために、粉粒体の運動と水-空気界面の振る舞いを
記述するモデルを構築し、数値シミュレーションによってその妥当性を確認した。
粉粒体の挙動には分子動力学法、水-空気界面の進行にはphase-field モデルを適用し、
粉粒体が親水性を持つことによる界面との相互作用を考慮した。
さらに、実験で観られる粉粒体のstick-slip 的な挙動を考慮し、
粉粒体はガラス板から摩擦抵抗を受けるものとした。
粉粒体領域の密度、水の相の安定性、摩擦係数をコントロールパラメータとして
シミュレーションを行ったところ、比較的乾燥が遅い場合または摩擦抵抗が小さい場合に
粉体領域が孤立しにくくなり、迷路状のパターンが形成されることが分かった。
その形成過程において、界面に運ばれた粉粒体が集まることで、
界面からの力に抵抗して静止する様子が再現された。
さらに摩擦抵抗を取り入れたことで、実験において見られるような、
界面が至る所で進行と停滞を繰り返しながら空気領域が蛇行する場合と、
界面全体が同時に進行しパターンに異方性が生じる場合の双方を同じモデルで再現することが出来た。
また、パターン形成過程における界面の形状について、自己アフィン指数を求めること
で、粉粒体の密度が大きくなるにつれて自己アフィンフラクタルから自己相似フラクタル
に移り変わる現象が確認された。
さらに、この乾燥パターンの持つ特徴的な統計的性質は侵入型パーコレーションを
元にしたモデルによってある程度再現されることが確認されているが、
我々のモデルにおいても、侵入型パーコレーションの関連性が再現されるかどうかを調べた。