表題番号:2008B-154 日付:2009/04/08
研究課題FPGAを用いた粘弾性物質保持システムの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 宮下 朋之
研究成果概要
近年,コンピュータの性能向上に伴い,大規模な有限要素モデルの取扱が可能となりつつあり,従来は計算が困難であった現象の解析や計算時間が短縮され,設計工程へ有限要素法を実装した机上シミュレーションソフトウエアの導入も進んでいる.コンピュータの基本性能の向上に加え,ハードウエアも進歩が見られ,例えば,グラフィックスハードウエアやFPGA(Field Programmable Gate Array)に作成したプログラムを転送し高速に実行できる環境が整いつつある.
本研究では,有限要素法をFPGAを用いて高速に実行可能とすることを目的とし,特にロボットなどの動作機械におけるダイナミクスの推論エンジンとして活用することを視野に入れ,特に,ロボットアームにより取扱が困難である“やわらかい”物質の保持や移動を対象にした動作計画を支援するために,有限要素法による計算手順にリアルタイム性を実現できることを目標にアルゴリズム考案やシステム開発を実施し検証を行う.
具体的には,(1)FPGA及びFPGA用プログラム開発コンパイラを購入し,運動方程式の求解アルゴリズムのいくつかを実装し計算時間を比較し,(2)既所有の摩擦測定装置を活用したロボットアーム先端及び保持部と粘弾性物質間の摩擦測定を実施する.(3)FPGAの並列性を活用する有限要素法及び時刻暦応答計算の実装方法を検討し実装を行うこととし,(1)運動方程式の求解アルゴリズムとしてRunge-Kutta法,Newmark-b法,Wilson-θ法をソフトウエアのみで実装し,そのなかからFPGAへの実装に適したアルゴリズムの選定を行った.この選定は,単純に移植するのみでは,その計算時間面にて不十分であるとの結論を踏まえて選定し,ルンゲクッタ法を対象とし,さらにルンゲクッタ法の状態行列を対角化し多元の状態更新式を並列に実行できるアルゴリズムを検討した.すなわち,並列化アルゴリズムとして実装することが必要との結論に至った.(2)摩擦測定装置により摩擦を測定し,速度依存項を同定し力学的境界条件の同定を行った.