表題番号:2008B-147 日付:2009/03/18
研究課題微動測定に基づく市街地での地震被害率推定法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 前田 寿朗
研究成果概要
2007年能登半島地震では,震央から20km程度離れた石川県穴水町市街地において,全壊家屋分布に関して局所的な被害集中が認められた.穴水町は海に向かって開いた,後背部に山地を有する平地であり,河川の付け替えもたびたび行われ,直下の複雑な地盤構造が類推される.我々は被害集中の要因として地盤による極端な地震動の増幅を考え,地盤構造を明らかにするために2007年夏に市街地全域にわたる微動測定を行い,測定結果の分析より市街地のおおよその地盤構造と被害分布の関係を明らかにした.
2008年夏には,100m四方程度の被害集中の顕著な地域において高密度の微動測定を行い,その地域の基盤深さ14m程度に対して,その周囲は基盤深さ3m程度と浅く,一方に口を開いた湾状の構造をしていることを明らかにした.さらに,地盤構造を2次元でモデル化して有限要素解析を行い,直達波と表面波の増幅的干渉により地震動が増大することを示した.
能登半島地震における近辺の岩盤での記録を用いて,市街地の地震動記録を説明する1次元表層地盤モデルを作成し,その物性を上述の2次元モデルに適用するとともに,支持基盤で推定された地震動を入力することにより,被害集中地域では周辺に対して1Hz付近で10%程度の最大応答加速度の増大があったことを推定した.主に被害を受けた木造住宅は,既往の研究より1Hz程度の地震動によって大被害を受ける傾向があることが示されており,本研究の結果においても比較的厚い軟弱層が非線形化して常時の2Hzの卓越振動数が1Hzに低下するとともに,湾状の地盤構造により1Hz付近の地震動成分がさらに増幅されたため,顕著な被害が生じたものと結論付けられた.
本研究の主題は,高密度の微動測定により,地盤構造ならびに被害分布を事前に推定して地震災害軽減につなげることであり,今回の穴水町での検討結果は,事前検討の有用性を示唆するものである.