表題番号:2008B-145 日付:2009/03/20
研究課題エアロゾル中の新規有害含酸素芳香族の探索と大気動態解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 名古屋 俊士
研究成果概要
本助成金を受けた1年間における業績は、昨年度の第17回環境化学討論会および第49回大気環境学会において発表し、高い評価を受けた。本研究により得られた成果は、学術的新規性を有するだけでなく、今後のわが国における大気環境保全に向けて極めて重要かつ新しい課題の提言となりうるものであった。その主な概要は以下の通りである。
 近年、大気浮遊粒子に含まれる新規有害物質として、含酸素多環芳香族炭化水素(Oxygenated PAHs, オキシPAHs)が指摘されはじめている。オキシPAHsの発生源は、ディーゼルエンジン等の燃焼機関のほかに、PAHsの大気中酸化による二次生成の寄与も予想される。したがって、大気浮遊粒子の健康影響を正しく評価するためには、オキシPAHsの発生源の特定を含めた大気動態の解明が必要であるが、その分析法や環境動態に関する報告は極めて少なく、国内においては、その同定、定量さえほとんどなされていない。そこで本研究では、その高精度かつ迅速な分析手法について検討するとともに、大気中濃度の測定および動態解析を行った。その結果、無修飾シリカゲルを用いた固相抽出法を前処理に用いることで、これまでよりも迅速かつ正確な分析を可能とすることができた。さらに、オキシPAHsの実大気観測の結果から、自動車からの直接排出だけでなく大気中二次生成による発生が有意に存在することをはじめて明らかとした。この研究成果は、これまでの大気環境のリスク評価をより確からしいものにするのみではなく、特に近年、オキシダント、二次生成エアロゾル、ニトロPAHsといった大気中二次生成物質による大気質の悪化が懸念される我が国において、本研究結果は大気環境分野の学術的発展にも大いに利するところが大きい。