表題番号:2008B-143 日付:2009/03/09
研究課題社会基盤整備における資源便益を考慮した環境負荷低減と材料の有効活用に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 関 博
研究成果概要
 年間約8千万トンと多量に排出される建設廃棄物のうちコンクリート塊は40‰強を占めている.高度経済成長期やそれ以前に建設された既存の施設は耐久性や機能性の限界に達っしたと評価されものが多く、多くは撤去される状況にあり,今後はその量は増加すると考えられる.また,現状では良好な普通骨材の供給不足が懸念されており,今後コンクリート塊より骨材を取り出して(いわゆる、再生骨材)コンクリート用の骨材として再利用することが必要不可欠と考えられる.このような状況を鑑み,これまでに3種類の再生骨材(再生骨材L, M, H)がJISにより制定されている.このうち,2005年に規定された再生骨材Hは普通骨材と同等の品質を有することを前提として規格が定められており,RC情造物への利用が期待されている.しかし,コンクリート用骨材としての基本的な規格は設定されたものの長期的な性能評価には至っていない.さらに、現状は再生骨材を活用したときの環境への影響(たとえば、利点としては地球環境における省資源)にまでは言及していない。そこで、本研究では、普通骨材コンクリートと再生骨材コンクリートに関して塩害における劣化予測を行うこととして、耐用年数を想定するために塩化物イオンの拡散係数を求める実験を実施した.さらに,再生骨材Hを用いた再生骨材コンクリート構造物の環境負荷をLCAの手法を用いて評価することとした.
 塩害を受けるRC構造物の劣化予測には,コンクリートの塩化物イオン拡散係数が必要である.2007年制定のコンクリート標準示方言[設計編]では,使用骨材による拡散係数の違いについては記述されていない.そこで,実験では、普通ポルトランドセメントを選び,普通骨材および再生骨材の組み合わせによる7種類の供試体を作製し,電気泳動によるコンクリート中の塩化物イオンの実効拡散係数試験を行った.
また,LCAに関しては,インベントリー分析によりLCCO2, LCSOx , LCNOx を算定した.
 実験結果およびLCAの試算から,今回使用した再生骨材の範囲では,以下のことがわかった.
(1)骨材の違いによる見掛けの拡散係数に有意な差は認められなかった.
(2)本実験で求めた拡散係数を用いた塩害劣化予測の結果に有意な差は認められなかった.
(3) LCAの評価では,骨材の違いによる環境負荷(LCCO2, LCSOx , LCNOxに有意な差は認められなかった.
すなわち,再生骨材を使用することによって塩害劣化に対しても普通骨材と同等の抵抗性を有することを明らかにした.