表題番号:2008B-142 日付:2009/03/26
研究課題最終処分場リスク低減促進からみた不均質な浸透流場の実験的検討とモデル化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 香村 一夫
研究成果概要
(研究概要)管理型最終処分場のおもな埋立物である焼却灰に焦点をあてた土槽実験を行った.土槽に充填した焼却灰は時間経過に伴って部分的な固結化がおこり,次第に「水みち」に沿った流れが生じるものと推定される.そこでこの「水みち」的な流動メカニズムを解明するとともに,それに伴う層の性状変化を把握する目的で,細工を施した土槽を製作し,現在実験遂行中である.以下にその概略について示す.
(実験方法)焼却灰を充填した塩ビ板からなる土槽(縦1m×横1.8m×深さ0.5m)を作製した.この土槽の下部は9つのセルに区切られている.そして降水器から土槽内地表面に一様な密度(30L/1セル)で定期的に降水し,土槽底部の各セルからの排水量を測定した.さらに排水の水質を調べた.測定項目は,電気伝導度,pHおよび水温,イオン濃度,重金属濃度,COD,TOCである.また,比抵抗を介して,模擬廃棄物層内の浸透水の挙動および層内の性状変化を可視化する目的で,土槽の長辺に平行な3測線(25cm間隔)を設置した.電極間隔は10cmで1測線は17点の電極から構成される.これらを用いて,降水ごとに数回の比抵抗測定を実施した.
(実験結果)これまでに得られたおもな結果を記す.
①各セルからの排水量は均等ではなく,セルあたり降水量30リットルに対して±25%程度のばらつきがあった.各セルからの排水の電気伝導度は散水1回目では0.5~0.9S/mを示すが散水回数が増えるにつれて減少し,散水4回目以降は0.2S/m程度で安定する.イオン濃度はNa,K,Cl,SO4が相対的に高く,その時系列変化は電気伝導度の変化と相関を有する.
②(各散水時の比抵抗/散水1回目の比抵抗)を算出し,その変化率を示す断面図を作成した.その結果,断面内に変化率の相異が認められ,排水量の多いセルの上方には変化率の大きいゾーンが存在している.この現象は層内浸透水の経路および量に影響されたものと考えられる.
(まとめ)これらの結果より層内の透水は非一様といえる.即ち,浸透水の挙動解明・モデル化は,廃棄物層内洗い出しの最適効果を得るために重要なデータとなる.