表題番号:2008B-140 日付:2010/08/25
研究課題室温強磁性希薄磁性多結晶焼結体セラミックスの創製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 山本 知之
研究成果概要
3d遷移金属元素などの磁性元素を希薄(数at%)に含み強磁性を示すものが希薄磁性体と呼ばれ,近年その強磁性発現機構に関する基礎研究のみにとどまらず,スピトロニクスへの応用を視野に入れた応用研究も活発に進められている.特に,応用の面から考えても希薄磁性体のキュリー温度が高い方が良いことから,室温で強磁性を示す希薄磁性体の探索が進められている.これらの多くは,非平衡プロセスによって作製された薄膜であり,多結晶焼結体で強磁性を示す希薄磁性体は数少ないが,MnとFeを共添加したIn2O3の多結晶焼結体が室温で強磁性を示すことが報告されていることから,本年度はその物質における強磁性発現機構の検討,ならびにIn2O3系の希薄磁性体の創製を試みた.磁性元素の局所環境については,様々な環境における試料作製を行い,第一原理計算とXANES(X-ray Absorption Near-Edge Structure:X線吸収端微細構造)測定を用いて,それらの 環境を考慮した第一原理計算による磁性元素の局所環境の予測及びXANESスペクトルの解析を行った.具体的には,焼成温度ならびに添加する磁性元素の濃度,種類を変えて,固相反応法により大気中及びAr雰囲気中で焼成し試料作製を行い,作製した試料を,粉末X線回折法を用いて磁性元素の置換固溶に伴う結晶構造の変化に関する構造解析,ならびに析出物の有無及び同定等を行った.本実験により,焼成温度と析出物の種類ならびに量を系統的なデータを得ることが出来た.更に,第一原理擬ポテンシャル計算に よって得られた磁性元素周辺の構造を用いて,磁性元素の局所環境を非常に敏感に検知することが可能であるXANESスペクトルの予測を行った.その結果, 添加した磁性元素の局所環境を特定することができ,Mnの価数の混在が強磁性発現に大きく寄与していることを見出すことができた.