表題番号:2008B-139 日付:2009/03/24
研究課題新規エピジェネティック治療薬の探索研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 中尾 洋一
研究成果概要
『エピジェネティクス』とは『世代を超えて継承され得る、塩基配列を伴わない遺伝子発現の変化』のことであり、おもにDNAのメチル化とヒストンの修飾によって多くの遺伝子の発現が制御されうることが知られている。がん治療では、DNAメチル化酵素(Dnmt)阻害剤やヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤を同時投与することによる相乗効果でがん抑制遺伝子の発現を高いレベルで誘導可能になると期待され、欧米を中心にDnmt阻害剤やHDAC阻害剤をがん治療に応用しようというエピジェネティック治療が推し進められており、現在、Dnmt阻害剤の5-Aza-CdRおよび5-Aza-CRが骨髄異型性症候群の治療薬として、HDAC阻害剤のSAHAが皮膚T細胞リンパ腫の治療薬としてFDAに承認され、治療効果をあげている
一方、研究代表者はこれまで海洋無脊椎動物を対象として、さまざまな酵素に対する阻害剤の探索研究を行い、鹿児島県産の海綿からアズマミドA-E(AzA-E)と命名した5種類の新規HDAC阻害剤を見出している。
以上のような背景下、本研究では、酵素阻害剤の宝庫である海洋無脊椎動物を探索対象として新たなDnmt阻害剤の探索を目的として研究を行った。まず、1型のDNAメチル化酵素であるDnmt1によるDNAメチル化阻害活性を調べるアッセイ系を確立した。ついで本アッセイ系を用いたスクリーニングを、日本近海で採集した海洋無脊椎動物の抽出物ライブラリー約400サンプルについて行い、約50サンプルに活性を認めた。今後はスクリーニングを継続するとともに、ヒットサンプルから活性化合物の単離・構造決定を行う予定である。