表題番号:2008B-138 日付:2009/05/08
研究課題鳥類のグローバルな位置認識に関わる磁界感知機構の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 岡野 俊行
研究成果概要
近年の研究から、脳や皮膚などの視細胞以外の部位にも光受容分子が存在し、外界の光を受容していることが明らかになってきた。これら網膜外光受容体には、レチナールを発色団とするオプシン型の光受容分子と、オプシンとは全く異なる光受容分子であるクリプトクロムがある。クリプトクロムは、青色感受性の光受容体として生物界に広く分布しており、動物においても光センサーとして機能していることが徐々に明らかになってきた。また、近年、伝書バトやイモリをはじめ多くの動物が光依存的に地磁場を感知して方位情報を探索や帰巣に役立てていることが証明され、その受容体としてもクリプトクロムが想定されている。このように、動物における新規の光応答経路と同時に磁場感知を担う分子として注目されているものの、クリプトクロムの研究は、オプシン類に比べるとかなり遅れている。このような背景の下に本研究では、クリプトクロムが光依存的な磁場センサーとして機能することを明らかにすることを目的として、広く脊椎動物のクリプトクロム遺伝子を単離・分析を行い、同時に皮膚細胞における光応答性を検討した。具体的にはまず、ニワトリCRY4と相互作用する分子の探索を行った。酵母ツーハイブリッド解析の結果、3種類の候補分子が単離され、それらをCRIP1-3と命名した。これらのうち、CRIP2分子については、抗体を作成して局在解析を行ったところ、網膜に特異的に発現していることがわかった。 [1]。また、NB1RGB細胞を用いたマイクロアレイ解析によりヒト皮膚細胞の光応答性を調べたところ、免疫応答性や食欲調節に関与するサイトカインであるMIC-1分子が青色光によって顕著に誘導されることを発見した[2]。