表題番号:2008B-128 日付:2009/03/27
研究課題遺伝的組換えの分子機構に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 胡桃坂 仁志
研究成果概要
相同DNA組換えは、減数分裂の第一分裂期におこり(減数分裂期組換え)、相同染色体間を物理的に連結するキアズマの形成に必須である。その結果として遺伝情報の再編成が行われ、この遺伝子再編成が現代の多大な生物種を生み出す原動力となった。またゲノムDNAは、担体として優れた性質を持っているが、環境からの外的要因(紫外線や放射線など)や細胞自身による内的要因(DNA複製のエラーなど)によって日常的に損傷を受けている。なかでも、二重鎖切断などの重篤なDNA損傷は、相同DNA組換えを経由したDNA修復経路(体細胞分裂期組換え)によって速やかに修復されることが近年明らかにされてきた。このように相同DNA組換えは、減数分裂期と体細胞分裂期での両方のDNA組換えにおいて機能している。しかし、そのメカニズムの詳細に関してはいまだ明らかにされていない。そこで本研究では、相同DNA組換えの分子機構を明らかにすることを目的として、相同DNA組換えにおいて働くタンパク質に着目し、それらの生化学的解析を行った。まず、リアルタイムで相同DNA組換え反応を検出するin vitro系を確立するために、蛍光標識したDNAを利用したFRET法によるDNA組換え検出系を確立した。本法では、DNA配列の中央部に蛍光色素を有するDNAを使用しており、正確に相同DNA組換え反応が触媒されたときのみ検出できる系である。この新たに確立した系を用いて、大腸菌RecA、ヒトRAD51およびDMC1、イネDMC1AおよびDMC1Bなどの組換え活性をリアルタイムで評価することに成功した。また、ヒトRAD51およびDMC1をアガロースビーズに固定し、RAD51ビーズおよびDMC1ビーズを作製した。これらのRAD51ビーズおよびDMC1ビーズを用いて、培養細胞の抽出液からRAD51およびDMC1と結合する因子群候補を、プロテオミクス法によって多数同定した。