表題番号:2008B-127 日付:2012/03/05
研究課題電子濃縮キノイドポリマーの創製と電極活物質への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 小柳津 研一
研究成果概要
n型レドックス活性な酸化還元席であるイミドやアントラキノンから誘導されるアニオンラジカルの化学安定度を増加させ、斬新なレドックス活性種として確立することにより、卑な電位で電気化学的に可逆応答を示す新しいレドックスポリマーを創出した。
イミド類は、-1 V vs. Ag/AgCl 付近で一電子還元され、アニオンラジカルの後続反応抑制に効く非プロトン性条件下において、可逆性高いレドックス応答が電気化学計測により実証された。一方、キノン類の二電子移動は、同条件下-0.8~-1.2 Vにおいて段階的に (異なる酸化還元電位で二段階にて) 生起し、セミキノンラジカルQ-・への第一還元波 (Q + e- = Q-・)に続きジアニオンを与える第二波 (Q-・ + e- = Q2-) が観測された。これらの有機電極反応を可逆性高く生起させるには、キノン酸素原子との水素結合形成が有効な手段であることを一般性高い知見として確立した。電荷貯蔵材料すなわち二次電池の電極活物質として長期使用に耐えうる化学安定性を具えた骨格として、イミド骨格に加えキノン類の中で突出した化学安定度を示すアントラキノン骨格に着目し、水素結合を安定度高く分子内で形成させるため、酸素原子の隣接位にアシルアミノ基などのプロトンドナー性置換基を導入したモデル化合物を合成した。
分子内水素結合を構造データ (各種NMR、単結晶X線構造解析など) から実証すると共に、アニオンラジカルの安定化に寄与していることを結合次数の解析から実証した。電極反応速度に相当する不均一系電子移動速度を幅広く実測し、溶媒因子などとの相関を明確にした。電子移動速度は、サイクリックボルタンメトリーを用いたNicolson法、Tafelプロットによる交換電流密度i0, ACインピーダンス測定によるナイキストプロットなどから定量し、電極表面の微細構造、吸着種の有無も含め詳細に解明した。