表題番号:2008B-126 日付:2009/05/07
研究課題動物におけるクリプトクロムの構造・機能および多様性の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 岡野 俊行
研究成果概要
脊椎動物は、外界の光環境に応答するために多様な光センサーを持ち、脳や皮膚をはじめとして生体内の様々な部位において光に応答する。本研究では特に、動物の新規光センサー分子として着目されつつあるクリプトクロムおよびその光情報伝達経路の性状解析を行い、未知なる光情報制御機構を明らかにすることを目的とした。
 具体的にはまず、網膜および松果体に発現する分子として、新規光受容体候補分子であるクリプトクロム4(CRY4)について、それらの遺伝子の単離・抗体作成・局在解析等を行った[1,2]。ニワトリCRY4に関しては、これまでに遺伝子の発現を調べていたため、モノクローナル抗体を作成し、まず生体における発現を調べた。その結果、網膜に特に高い発現が観察された。そこで次に、生体組織からのアフィニティー精製を行うために、エピトープ部位の決定と免疫沈降実験を行った。その結果、得られたモノクローナル抗体のうち少なくとも2種類が生体組織からの免疫沈降に使用可能であり、なかでも1種類では、エピトープペプチドによる蛋白質溶出が可能であった[1]。今後はこの抗体を用いて精製・単離したタンパク質複合体の解析によって、光情報伝達経路の全貌が明らかになると期待できる。これと並行して、個体レベルでのクリプトクロム解析の可能性を開拓するため、遺伝子操作が可能なゼブラフィッシュにおけるクリプトクロムの解析に着手した。まず、ゼブラフィッシュCRY4のカルボキシル末端付近を抗原としてモノクローナル抗体を作成したところ、抗原タンパク質に強く反応するモノクローナル抗体を複数単離することができた[2]。これらの鳥類や魚類における解析と並行して、ヒトの皮膚由来の初代培養繊維芽細胞を用いた光応答性の解析も行い、光に応答する遺伝子MIC-1を発見した[3]。
 以上の解析を通して、クリプトクロムが介する新しい光情報伝達経路の解析に先鞭をつけることができた。今後は、今回作成した抗体を用いたアフィニティー精製産物の解析によって、CRY4が光情報を伝える因子の同定ができると期待される。