表題番号:2008B-119 日付:2009/04/28
研究課題マネジメントコントロールシステムの実証的研究を融合した社会シミュレーション研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 高橋 真吾
研究成果概要
本研究の目的は,社会シミュレーションをマネジメントの意思決定支援に役立てるために実証研究と融合した方法論を開発するための基
礎的試みを行うことである。本年は主に次のようなテーマに関する研究を実行した。
1.業績評価システムにおける内発的動機付けモデルと情報共有化の分析
2.非財務指標を考慮した業績評価システムの設計
3.組織学習を促進する情報システムの評価と設計
 まず,社会シミュレーションの方法が未だ確立していないことから,特に検証と妥当性評価および意思決定支援のためのツールの開発
に集中して研究を行った。前者については業績[大堀他,2008]等により発表を行った。後者については,シナリオ分析の方法を意思決定
支援に利用できるツールとして開発を試みて,それを業績評価制度の分析に応用した[後藤他,2009]。
 また,概念的モデルに基づく分析[Sakuma et.al, 2008;佐久間他,2008]や,営業組織におけるバランストスコアカードの作成プロセス
におけるKPI指標の設計指針のモデルの開発とシミュレーション分析を行った[平澤他,2008]。
 本研究の目的を達成するためには,社会シミュレーションの妥当なモデルの開発方法として,実証研究との融合をいかに行うかという
課題も考えなくてはならない。そのため,実際にインタビューによる聞き取り調査やアンケート調査を行い,エージェントベースのモデ
ルの構築に必要なパラメータの同定と各エージェントのタイプの同定を行い,実施にエージェントベースモデル開発して社会シミュレー
ションにより,代替案の不確実性下での有効性を検証する試みを行った[山本他,2008]。業績リストには掲載されていないが,新潟県庁
における情報システムの導入に関わる問題点を実際に新潟県庁への聞き取り調査から明らかに,地方公共団体における情報システム導入
時,実施時の問題を表現できるエージェントベースモデルを開発し,実際の問題状況を再現するとともに,これまで研究室で開発した組
織学習の観点からの情報システムの導入指針に関する枠組みを利用して,再現した問題に有効な代替案を作成し,社会シミュレーション
によりその効果を比較した。これにより,情報システムの導入を評価したい管理層に対する意思決定支援の具体的方法の全体を示したも
のである。