表題番号:2008B-118 日付:2010/04/12
研究課題層状オキシハロゲン化物ナノシートを利用した共有結合界面型有機-無機ハイブリッド
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 菅原 義之
研究成果概要
層状遷移金属オキシハライド(MOX;Mは遷移金属,Xはハロゲン)は,インターカレーションのホストとしても用いられているが,ハロゲンが反応活性であることを利用すると,ハロゲンの置換反応により官能基をグラフトさせる事ができる.代表的なホストであるFeOClと同一構造を持つTiOClに関しては,これまでほとんど検討は行われていない.そこで本研究では,TiOClとリチウムエトキシド(LiOEt)との反応について検討を行った.エタノール中で両者を混合してアンプルに封入し(TiOCl:LiOEt = 1:1.3),120℃ で7 日間反応させた.TiOClは層間距離に対応する回折線が d = 0.80 nm に現れるが,反応後この回折線は消失し,新たにd = 1.19 nmに対応する回折線が認められた.また対応する2次回折も現れた.走査型電子顕微鏡で形態を観察したところ,TiOClと反応生成物はともに板状結晶であり,形態は極めて類似していた.電子線を板状結晶に対して垂直方向から入射して回折パターンを計測したところ,TiOClと反応生成物は極めて類似したパターンを示した.また,反応生成物では新しいスポットが認められており,対称性が低下したことが明らかとなった.固体高分解能NMRで有機基について調査したところ,反応後アルファ炭素によるシグナルだけが大きくシフトし (71 ppm),この値はTi(III)を含むTi(OEt)3のアルファ炭素のシグナルのケミカルシフト(68.5と66.7 ppm)に近い値であった.以上の結果から, Cl基をエトキシ基で置換した生成物が得られたものと推定された.