表題番号:2008B-115 日付:2009/02/15
研究課題高度電気化学的水処理法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 榊原 豊
研究成果概要
 20世紀後半から、し尿を分離して資源として再利用する持続可能なサニテーションシステムが提唱されている。尿中には抗生物質やエストロゲン等の有害物質が含まれており、再利用の際にはこれらの物資を効率良く除去することが重要になる。本研究では尿中の主成分である尿素等はそのまま通過させ抗生物質やエストロゲン等を除去する新しい処理プロセスを開発することを目的として、これまで研究している3次元電解槽の処理性能に関して理論的並びに実験的検討を行った。なお、有害物質として、生物撹乱性の最も大きい女性ホルモン(E2)及び公共水域で検出頻度が最も高い抗生物質の一つであるテトラサイクリン(TC)を用いた。
 その結果、人工尿を電解酸化すると、尿酸、E2、TCの順に除去され、主成分の尿素は未処理のままであることがわかった。また、尿酸を予め除去すればE2, TCの除去速度は飛躍的に向上すること、グラッシー粒状電極あるいはPt/Ti粒状電極を用いた場合にほぼ同様の処理性能が得られること、安定して連続処理可能であること等がわかった。さらに、最近国内外で研究されているオゾン処理法、光触媒酸化法、促進酸化処理法等に比べて処理に要するエネルギーが極めて少ないことも示された。一方、処理性能を表す数学モデルを限界電流理論に基づき構築し、モデル計算値と実測値を比較したところ両者は大きく異なった。モデル内に電解酸化の効率を表す係数を導入すると実測値のシミュレーションは可能であるが、係数は操作条件により異なり、その数値については今後更に検討が必要であると考えられた。