表題番号:2008B-113 日付:2009/03/17
研究課題最適波面符号化とブラインド画像復元の融合による超焦点深度拡張
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小松 進一
研究成果概要
 固定焦点式光学撮像モジュールの焦点深度(被写界深度)を,明るさを損なわずに拡張するために,デジタル画像処理を併用するハイブリッド・イメージング技術に世界的な関心が集まっている。本研究の最終目標は,ハイブリッド・イメージング技術の中でもとくに注目を浴びている波面符号化法を最適化し,この方法の原理と本質を物理的見地から解明するとともに,ブラインド画像復元との融合によって,従来の限界を超えた超焦点深度拡張を達成することである。
 高感度16 ビットCCD カメラ,空間位相変調器,数値計算用ワークステーションを用いて,最終目標を達成する計画であるが,本年度の特定課題研究の予算内では実行できない。したがって本特定課題においては,上記最終目標の達成に向けた基礎固めを行うことを目的とし,波面符号化法の原理と最適化位相板の特性に関する検討を主な課題とした。
 まず初めに,Dowski らが提案した3次位相板(直交瞳座標の3乗に比例する位相分布)が焦点はずれ量に依らない点像分布関数を形成するか,その物理的な仕掛けを明らかにした。Dowski らは,結像光学系の空間周波数伝達特性を表す光学伝達関数(OTF:Optical Transfer Function)をいろいろな焦点はずれに対して包括的に表現する曖昧(両義性)関数(Ambiguity Function)に停留位相法を適用して,3次位相板がよい近似解となることを導いている。これに対して申請者は,3次位相の波面収差は,3次位相の横シフトという形で,焦点はずれを表す2次関数の収差を吸収できることに着目した。
この結果,瞳径が大きくF値の小さな結像光学系においては,点像分布関数が焦点はずれ量に依存しないことがわかった。3次位相板が軸上の色収差に強いことも同様に理解できる。また逆に,横シフトによって焦点はずれを吸収できるのは3次位相板に限ることを示すこともできた。さらに,幾何光学的アプローチから3次位相板の必然性を示すことができた。
 一方,申請者らの提案した最適化位相板の軸外特性について,詳細なシミュレーションを行い,3次位相板に比べて非常に優れた特性が得られることを確認した。このことは,高分子材料の射出成型で作製した最適化位相板を用いた光学実験でも確認することができた。