表題番号:2008B-112 日付:2013/01/23
研究課題細胞内酸素代謝に基づいた新たな低酸素感知・応答機構の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 合田 亘人
研究成果概要

本研究課題では、次の2つの研究プロジェクトを同時に進めてきた。
1)低酸素感知・応答機構の生物学的機能の解析
昨年度に引き続き、糖尿病下における肝臓内の糖関連酵素発現リモデリングにおける低酸素感受性転写制御因子であるhypoxia inducible factor-1(HIF-1)の生物作用について検討を行った。これまで高糖質・脂質食の短期投与では、HIF-1依存性のグルコキナーゼ発現制御を介して肝臓における糖の取り込みを促進することでHIF-1が血糖降下作用を有することを明らかにしてきたが、今年度は25週間の長期投与を行うことで全身性および肝臓におけるインスリン抵抗性の発症に対するHIF-1の生物作用について検討を進めた。糖負荷試験およびインスリン負荷試験の結果、HIF-1欠損マウスでは肝臓のみならず骨格筋や脂肪組織におけるインスリン抵抗性が増強することが明らかになり、HIF-1が糖尿病抑制因子として機能することが明らかになった。現在、その分子メカニズムについて解析を進めている。
2)新規低酸素感知蛋白質の検索
HIF-1alphaの特定のプロリン残基が酸素濃度依存的に水酸化されることが低酸素応答の制御に重要であることが明らかにされて以来、この反応機構を触媒するalpha-KG/Fe(II)依存性酸素添加酵素群の中に新規低酸素感知蛋白質が存在する可能性が高まってきている。本研究課題では、プロリン水酸化をターゲットとした酸素センサータンパク質の検索を目的として、プロリン水酸化を特異的に認識する単クローン抗体の作成に取り組んだ。ペプチド抗原を用いたELISAの結果、これまでに少なくとも2種類の候補抗体を得ることができた。現在これらの抗体がHIF-1alphaに代表されるnativeなプロリン水酸化タンパク質を認識できるか否かについて検討を重ねている。この確認が得られた後には、この抗体で免疫沈降されるタンパク質の同定を質量分析により明らかにしていく予定である。