表題番号:2008B-102 日付:2009/04/02
研究課題Ⅳ族半導体/酸化膜界面形成メカニズムの統一的解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 渡邉 孝信
研究成果概要
本研究では、従来のシリコン熱酸化機構に関する理解を深めるとともに、シリコン以外のⅣ族系半導体材料の熱酸化機構の統一的解明を目的とする展開を図った。その結果、以下の成果を得た。

・熱酸化速度の圧力依存性の新理論を提唱
40年来信じられてきたシリコン熱酸化機構の標準モデル”Deal-Groveモデル”では、乾燥酸素雰囲気中での初期の熱酸化速度のみが非線形な酸素分圧依存性を有する事実についれ明確な説明ができなかったが、研究代表者が提案した新理論の枠組みで酸素分圧依存性を定式化することに成功し、酸化膜とシリコン基板の界面付近の歪みを帯びた層内で、酸素分子の拡散係数が酸素分子濃度依存性を有することでこの現象を説明できることが判明した。

・界面遷移領域の分子動力学シミュレーション
研究代表者が提唱したシリコン熱酸化の新しい物理モデルの妥当性を検証するため、SiO2/Si界面の大規模モデリングを実施し、格子間O2分子のポテンシャルエネルギーマップを作成した。その結果、新モデルで仮定されていた構造遷移領域内でのポテンシャルの上昇が確認され、新モデルの妥当性が定量的に示された。

・GeO2/Ge系のシミュレーションを初めて実現
Si以外のⅣ族系半導体への展開の第1歩として、Geの熱酸化膜のモデリングに挑戦した。Ge,O混在系用原子間相互作用モデルを開発し、GeO2/Ge界面の大規模モデルを世界に先駆けて実現した。GeO2/Ge界面の歪みはSiO2/Si系に比べて小さいことが判明し、Geの方が本質的には良好な界面を形成しうることが示唆された。このことは、他機関による最新の実験データとも一致しており、Siに代わる高性能のトランジスタ材料の有力候補としてGeへの関心が一層高まると予想される。