表題番号:2008B-099 日付:2009/03/24
研究課題光を用いた音場の直接観測とその応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 及川 靖広
(連携研究者) 大学院国際情報通信研究科 教授 山崎芳男
(連携研究者) 環境総合研究センター 客員講師(専任扱い) 大内康裕
研究成果概要
これまで音場の把握を目的として近接4点法をはじめとする手法で様々な音場を観測してきた。特に近年では実音場の精細な把握・測定を目的として、レーザ干渉計を用いた音場の観測法を試みている。本手法は光波が空気中を進む際その速度が空気の密度により変化する現象に基づきレーザ干渉計を用いて測定された光路長の変化から空気の疎密(音)を観測するものである。さらにレーザ干渉計を走査して得た音場の投影情報に計算断層撮影法を適用することで音圧分布の再構成を行ってきた。レーザを用いた音場の観測法は、広範囲の音場の空間情報を同時に計測することを可能にし、また観測対象となる音場に直接、観測器を設置することがないという特徴がある。
これまでの研究ではスピーカの再生する定常的な音場を観測の対象とし、測定信号には正弦波の連続信号を用い、特定の周波数成分について観測を行ってきた。しかし、反射音など複雑な音場を観測するには、直接音と反射音の区別など、過渡的な音場の観測を可能にする必要がある。本研究では測定信号にパルス音波を用い、レーザ干渉計によって進行波の観測を行った。平板スピーカにより駆動された平面進行波(パルス音波)の音響反射板による反射について、走査型レーザ干渉計による音波の2次元の投影と2次元の計算機シミュレーションの結果との比較を行った。また、投影情報を計算断層撮影法を用いて点の情報に再構成しなおすことでより音場の詳細な情報が得られることを示し、そこでパルス音波の点情報への再構成を試みた。また、音の干渉、反射、回折などの基礎的現象の観測を行った。特に高速道路などに設置されている防音壁の効果、スピーカアレイの指向性制御を確認することができた。
レーザを用いることで測定点自体に測定器を置く必要がないという特徴をもつことから様々な音場への応用が期待されているが、本手法を測定技術として確立するには実現できる測定精度を明らかにし、誤差の要因をできる限り予測する必要がある。本研究では提案するレーザによる測定手法における測定における誤差の基礎的な分析も行った。スピーカの再生する音場に対してレーザを用いた音圧レベル分布と騒音計を用いた結果の比較を行い,壁面の振動による誤差が充分に無視できることを確認した。
さらに、高速度カメラを用いた音場測定に関し検討を加え、発音体の振動そのものの観測、LEDと高速度カメラを用いた音場観測の基礎的実験を行い、その有用性を示した。