表題番号:2008B-098 日付:2009/03/10
研究課題コラーゲンからの創薬研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小出 隆規
研究成果概要
本研究では、①コラーゲンおよびヘパラン硫酸プログリカンに結合する血管新生阻害/神経栄養因子である色素上皮由来因子(Pigment epithelium-derived factor, PEDF)、②血小板上のコラーゲン受容体であるGlycoprotein VI (GPVI)、③ガス壊疽菌クロストリジウムがもつコラゲナーゼのコラーゲン結合ドメイン(Collagen-binding domain, CBD)の3種のコラーゲン結合タンパク質について、それぞれのコラーゲン認識機構を検討した。
①PEDFのコラーゲン認識機構:アミノ酸残基特異的化学修飾を施したコラーゲンとの結合性、およびマトリックスメタロプロテアーゼにより断片化したコラーゲンとの結合性の情報から、PEDFが結合しうるコラーゲン上のアミノ酸配列を予測し、それに基づいてペプチドを化学合成した。合成ペプチドとPEDFとの結合を調べた結果、PEDFが認識するコラーゲン上の配列をひとつ同定することができた。
②GPVIのコラーゲン認識機構:上記PEDF結合性ペプチドを含む多くの合成コラーゲン様ペプチドとGPVI細胞外ドメインとの結合を調べた。その結果、GPVIはPEDFと一部オーバーラップしたコラーゲン上の配列を認識して結合しうることが明らかとなった。
③コラゲナーゼCBDのコラーゲン認識機構:コラゲナーゼCBDの立体構造については、既に結晶構造が解かれているので既知である。ここでは、コラーゲン上でCBDがどのように配向して結合しているのかを明らかにするために、CBDのNMRシグナルのペプチドによる常磁性緩和によるシグナル消去を利用した。具体的には、コラーゲン様ペプチドの様々な位置に常磁性のPROXYLを導入したものを調製し、これらとCBDとの複合体のHSQCを測定し、シグナルが消去されるアミノ酸残基を特定した。この解析の結果から、コラーゲン上でCBDが一方向に配向していることが明らかとなった.