表題番号:2008B-096 日付:2009/03/25
研究課題赤外・ラマン・SFG分光法による有機多層薄膜における埋もれた固体・界面構造の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 古川 行夫
(連携研究者) 理工学術院 客員講師(専任扱い) 細井宜伸
研究成果概要
有機薄膜トランジスタでは,厚さが50 nm以下の非常に薄い有機半導体薄膜が使用されており,トランジスタ特性を決める要因の一つであるキャリアの移動度は有機薄膜の構造に依存する.赤外・ラマン分光により,このような薄膜における分子配向を研究した.ラマン分光により,薄膜トランジスタに使用されているp型半導体であるペンタセンの薄膜における分子配向を研究した.ボトムコンタクト型では,電極である金の上とSiO2上に形成されるチャネル領域では,配向が異なっていることがわかった.SiO2上では分子長軸が基板面に垂直に近いが,Au上では,傾きが大きくなっている.Au上とSiO2上での配向の違いが構造欠陥となっている可能性が高い.一般に,ボトムコンタクト型はトップコンタクト型よりも電界効果移動度が小さいが,このような構造欠陥に起因している可能性がある.赤外分光により,薄膜トランジスタに使用されているn型半導体であるPTCDI-C8の薄膜における分子配向を研究した.PTCDI-C8分子も基板に対して,分子長軸がほぼ垂直に近い配向をとっていることがわかった.有機薄膜トランジスタにおいて,キャリアは,分子のπ電子平面の重なりにより形成されるカラムを流れると考えられており,分子面が基板に垂直に近いことは,伝導カラムが基板面に平行になっていることと矛盾せず,ペンタセンやPTCDI-C8で大きな電界効果移動度が得られていることを説明できる.